駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

仕事納め

2008年12月29日 | 身辺記
 本日は当院の仕事納めだ。毎年、最終日は患者さんが思いの外少ないので、今年はいつまでやるかなと迷うのだが、職員達がやりましょうというので、29日(月)全日稼働となった。幸い閑古鳥は鳴かず、そこそこの出足で午後も患者さんがぼつぼつ来られた。
 4,5年に一度年末年始の当番医が回ってくるが、今年はそれもないし、重症の患者さんも93歳で12月半ばに亡くなったので、久しぶりに暮れの2日間はのんびり出来そうだ。BGM(歌謡曲以外)を聞きながらストーブ(残念ながら薪ではない)の前で、ワインを嘗めながら、ミステリーを読めれば最高だ。どちらかといえば翻訳物の方が好きで、謎解きも大事だが、人物の造型がちゃんと出来ていないと楽しめない。フロストなど好みだが、それほど沢山出ているわけではないので、大事に読んでいる。
 普段出来ないことをあれもこれもと思うが、実際には出来ないのを悟ったので、詰まるところ、残りは女房の買い物の付き合いと部屋の片づけで終わりそうだ。
 それとブログも書くだろう。とにかく一年はキチンと続けようと思っているので、あと一息だ。
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本当のことを少し

2008年12月29日 | 医療
 所謂風邪には抗生剤は不要であるのは周知の事実にも拘わらず、長年判で押したように抗生剤が投与されてきた(本当に判を押していた医院もある)。
 実際のところ、風邪(風邪症候群)の中には抗生剤が有効ないし必要な細菌感染に依るものが20%程度混じっている。この病態を問診と診察で100%見つけ出すことは非常に難しい。医師の経験と知識によって異なるが、80%前後は見つけ出せよう。そうして抗生剤を必要と判断した症例だけに抗生剤を投与すると数%の抗生剤投与が必要あるいは望ましい患者が見逃されることになる。
 抗生剤投与による即時あるいは直接の副作用は少ないので、この数%の見逃しを避けることを理由?として風邪となればすぐ抗生剤を投与する絨毯爆撃が数年前まで行われてきた。もう一つの理由には抗生剤を投与した方が大きな声では言えないが、売り上げが上がり、それを強く助長する薬剤メーカー(医療機関と共に売り上げが上がる)の宣伝があった。しかしこうした抗生剤の使用法は耐性菌を生み出し、医療費の無駄使いになるとの反省から、小児科医を中心に声が上がり、この数年は最初から抗生剤を使用する医師はかなり減っている。
 当院はこうした動きに十年先駆けて、抗生剤の使用を絞り、よく観察考えて抗生剤を使用してきた。なぜそういうことが可能だったか、それは私が町医者だからだ。近隣で気軽に掛かることができるので、もし熱や痛みが良くならなかったら又おいでと言っておけば、翌日や翌々日に「先生、よくなんないよお」。とやってくる。そこで再診察再考すれば、十分間にあう。中には他医へ行かれた患者さんも少数は居ると思うが。
 良くならない場合、ここは藪だと患者さんが離れていかない自信、あるいは離れてもいいという覚悟がないとこの診療法は難しい。私も開業後数年は80%近くの風邪症候群に抗生剤を投与していた。現在は抗生剤を投与する風邪症候群は20%程度で、売り上げにすれば年に200万円程のマイナスである。実際の風邪の治り具合は変わりないと思う(統計は取っていない)ので廉価に治療できていることになる。
 患者さんがこうしたことに気付いているかといえば、否である。かなり減ったが抗生剤御指定や注射御指定の患者さんがおられる。やんわり、不要だからとお断りしているが不満そうにされる方も多い。中には他医へ回られる方もおられるかもしれない。
 時々患者さんにちょっと賢くなって欲しいと思う。
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