マガジンひとり

自分なりの記録

パラリンピック女子書道

2008-09-03 20:14:03 | マンガ
「書の道」ひさうちみちお(『100万人のマスチゲン』青林堂、に収録。初出は漫画カルメン1982年5月号)
わたし松本伊代は花嫁修行のひとつとして書道を教わっていましたが、交通事故のため両腕を切断し、人の世話にならなければ何ひとつできない日常生活の不便、たくさんのボーイフレンドたちが去っていったこと、そして好きな書道を断念しなければならないことで絶望的な気持ちになり毎日死人のように暮らしていました。
そんなある日、書道の先生がお見舞いに来て「もし君がホントオに書をしたいと願っているなら腕など必要ない。やる気があるなら私の家に住み込んで朝から晩まで修行する覚悟が必要だが耐えられるか」と訊いてくれました。新しい生き甲斐を見つけたわたしは、先生のお宅で書道を究めるためありとあらゆる方法を模索することになったのです。


100万人のマスチゲン (1982年)
ひさうち みちお
青林堂

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鬼畜!と思います?身体障害者を題材とするエロマンガ。この本には他にも聾唖者の夫婦を題材とする「名もなく貧しく恥ずかしく」も収められてる。
しかし昨年、ひさうちみちおさんが青林工藝舎から出した『精G・母と子の絆』で老親のおむつを替えたり、親の性格のいやな部分も描くなどしてるのを見て、やっぱり…と。
責任を取る、というのとも少し異なる。一貫してる。若き日からの作風にぶれがない。あの、ひさうちみちおさんなら、老親の介護についてもきっちり描くだろうなあ、ということが「書の道」の作品にすでに明確に表れている。
とともに『100万人のマスチゲン』には、性風俗などを取り締まるとき見当違いな方向に行きがちな官憲や世間の良識、あるいは朝鮮人や乞食への差別の問題などもやや練りの少ない実験的なタッチながらさまざまに描かれてる。
初出の発表誌も、もろにエロマンガな漫画カルメン以外はガロ、漫金超、JUNE、マンガ奇想天外などとバラエティに富んでるね。
エロマンガを描く人ってのはだいたいが本当に好きで情熱をたぎらせて描いてるからさ、絵柄・作風といったものも多種多様なことが試しつくされちゃってる厳しい世界のように思うんだけども、ひさうちみちおさんの作風というのは近い人さえ誰も見つからない。似せること、盗むことも困難な、すべてにおいて作者の意思の貫徹されてる完全にオリジナルな存在。


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