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主婦という運命

2020-06-11 18:23:53 | マンガ
萩尾望都さんの代表作の一つであるSF中篇「11人いる!」は普通の判型のコミックスになったことがなく、雑誌掲載の約1年後の1976年7月に漫画の文庫化の走りであった小学館文庫に中短篇集『11人いる!』として加わる。私が初めて買った彼女の本であり、その後やや大きい作品集版に買い替えていたが、文庫で読み返したくなって『精霊狩り』と共に入手。

タイトル作以外の短篇は「ユニコーンの夢」「6月の声」「10月の少女たち」となっており、初めて読んだ中学のときはそれらの(タイトル作と趣きの異なる)フェミニンさに戸惑った記憶があるのだが、いまにして4つの収録作すべて恋愛結婚という共通のテーマが描かれていることに気づく。

最も最初と違う違和感を覚えた「6月の声」。両親を宇宙で失った少年ルセルは、美しい従姉エディリーヌが太陽系外惑星移民ロケット2万人の乗組員に志願し選ばれたと知り驚く。彼女の婚約者ロードはこのロケットの設計者でエディリーヌ号と名付けたのだが、ロード自身は乗り組まない。2万人は冬眠を繰り返しながら船内で結婚出産し、何百何千年とかけて彼らの子孫が人の住める惑星にたどり着く計画なのだ。実はエディリーヌの心は既にロードから離れて海洋学者アロウに移っており、アロウが海で事故死したためその遺志を継いで船に乗り組むのだという。

「11人いる!」のフロル、あるいは「10月の少女たち」のフライシーとは異なる、単なる恋愛結婚といえない苦さがある。エディリーヌの心はロードに戻らず、彼女を置いて宇宙へ旅立つ筈だったアロウの代わりに船に乗り、船内で誰かと結婚して2度と地球へは戻らないし、その子孫がどこかの星へ着くとしても登場人物が全員死んでしまっている遠い未来のことである。




小雪 @Syousetsu_K 6月2日
AppleMusic、急にForYouや見つけるの項目が全部ブラックミュージックのチャンネルになってしまった……

い、いや、黒人差別に声を上げる姿勢は大事だと思うんですけど、金を払ってるサービスでこういうことされるとな……

せめて最初だけ表示してもいいから、任意でいつものサービス使わせてくれ……

ビニールタッキー @vinyl_tackey 6月3日
「ブラックミュージックは素晴らしいから黒人差別はいけない」という考え方は『ゲット・アウト』に登場するクソどもと同じ考え方ですよ。素晴らしかろうが素晴らしくなかろうが差別はいけない。



田亀源五郎 @tagagen 6月11日
ちょうど10年前に、自分が『風と共に去りぬ』を久々に再見したときの感想。

 @porororocca 6月3日
高校で一番喋った女子に卒業の日「写真撮ろうよ〜もう一生会わないんだよ?」って言われたのきつくなってきた





フライシーはまだ学生の身で、パフェに行ったり服を選んだり「夢と砂糖菓子の少女時代にさよなら」して「四六時中あの人のこと考える」結婚生活を受け入れる。「11人いる!」のフロルはもっと直接的。両性具有の星でどちらでも選べるが一夫多妻が制度化され、親から隣の領主の9番目の妻にされそうに。(宇宙)大学に受かったら男になれるが、受験で運命を共にしたタダとなら「女になってもいい」。また別の本に入っている原作付き「マリーン」では貴族同士の婚約者と船上テニスで対戦した貧しい生い立ちの男に「初めて恋を知り」、結果全員が不幸になる後味の悪い…。

70年代の日本の女にとって、結婚とは家制度に縛られて低い身分に置かれ、主体的に生きる人生を諦めねばならない決断であった。しかし高度成長がピークに達し、「3食昼寝付き」「家つきカーつきババぬき」の欺瞞的な家庭の幸福が望まれ、大多数の女がそれに従う時代でもあった。この本の収録作をはじめ、萩尾さんの初期の漫画はそんな現実をせいいっぱい少女のロマン=恋愛では男女対等だったり女が主導権を握って男を振り回したりする=と折り合わせようと試みた結果ではないか。

奴隷貿易・戦争・共産革命・フォーディズム・バブル経済・IT革命…。常に成長を求める資本主義が限界に達し、インフラや工場などを資本としてきたのが、人間そのものを囲い込んで資本すなわち利回りであるという時代に。アップルは自分たちが主人であると誇示するため「予告なく急にポータルを黒人音楽で埋め尽くす」。また黒人音楽をそのように使うこと自体「音楽を生み出せるような黒人なら素晴らしい」のように能力によって差別する含みがある。工場を持たず、宗教的なブランド価値で莫大な収益を得る。アマゾンやグーグルはまた違うやり方だが客そのものを資本化しているのは同じだ。

「6月の声」に違和感を覚えたのは、単に「太陽系外への移民」がいまでは荒唐無稽、人は地球を離れては長く生きられないことがはっきりしたためだけでなく、人は一時的な恋愛の満足=チヤホヤと言い換えてもいい=さえ与えれば、宗教やイデオロギーなど観念の下僕となって資本主義の交換可能な部品を志願してしまう悪夢のSFに変貌してしまったからです (◞‸◟ )

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