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巻き添え食ってたまるかよ

芸者(お座敷に呼ばれる)

2020-11-22 19:50:38 | マンガ
かつてのロンドンハーツは実験を重ねながら趣向が変ってゆく番組であった。美人局と取られかねないような不穏な企画もあったが、それらドッキリや格付けなどを通じ出演者の素の人間味が浮き彫りに。たとえば有吉弘行氏のタレント進路相談で熊田曜子・磯山さやからはこうやってイジればいいという模範回答が示され、他の番組も追随するので、彼女らは仕事が増えて長く売れ、単なるグラドルであった若い頃より垢抜けた「キャラ」として定着。

アメトーク・ゴッドタン・ダウンタウンDXといった番組も同様に連携しながら芸人のキャラを方向づけ、他の番組に波及させる影響力を持つが、芸人以外、美人タレントの登竜門にもなっているロンハーは一頭地を抜いていた。しかしこのところこれらの番組が急激に新鮮味を失いつまらなくなってしまった。直接にはユーチューブとコロナ禍の影響なのだろうが、ロンハーなどの作り自体にも内在する弊害がその2つをきっかけとして噴き出したというべきか。

ハライチのラジオで11月初めのアメトーク、それまでに比べ「初めて爪痕を残せて」加地Pにも褒められたと岩井氏がいうので見てみると、ハライチと同期の売れている芸人が集い、ハライチだけ吉本興業所属でなく、吉本芸人のスクールやライブなど仲間意識・関係性を売りにするワチャワチャ感に岩井が噛み付いて~というまあ面白い回ではあるものの、そもそも岩井が噛み付くというのもそれまでゴッドタンなどで培われたキャラ・関係性の産物であり、岩井と交流のある長田氏がいるチョコレートプラネットに至っては「漫才が苦手なのでコントをやって賞レースで健闘、しかし売れたのは松尾氏が他の人と組んでショーパブ的なネタとしてやっていたIKKOさんのマネ」。さらにTT兄弟という分りやすいキャラ芸も売れて…。キャラで一気に売れたけど他のキャラに変れそうになくてすぐ消えたスギちゃんとかが気の毒に。

売れることがすべて。そのためにやれることをやる。自分がやりたい・作りたいというよりいかに分りやすくてテレビ制作側が使いやすいか。いったん売れれば私生活のクズっぷりであったり芸人仲間の関係性も使ってもらえる。ユーチューブで仲間を呼んでダラダラしゃべる、ゲームの実況やら歌ってみたやら自分の切り売り。むかしアントニオ猪木が青森県知事選の応援演説で、当初は核サイクル施設反対派に呼ばれていたが、お金を積まれて推進派に寝返ったというように、人気とお金を求めるとどうしても政治・社会問題はタブーになり、何人かの芸人のように安倍政権や維新のプロパガンダに積極的に協力する者も。そのくせ身内からコロナ陽性が続出。



大阪の貸本出身で、それまでにない漫画を志し「劇画工房」を立ち上げた辰巳ヨシヒロ・さいとうたかを・佐藤まさあき・松本正彦たち。この時代のことを彼らが描いた作品はどれも栄養満点ながら、松本氏の『劇画バカたち!!』は知名度で劣るもののヘッダー画像の筆おろし相手である娼婦の身の上を思いやる描写など弱い立場の人の心情を丁寧にすくいとる逸品である。

彼らがおもに執筆していた日の丸文庫の社長は土建屋のオヤジみたいな風体で、東京の出版社に敵愾心を持ちながらも、ツテを頼って「漫画集団」と呼ばれた新聞・雑誌の風刺コマ漫画作家の作品を出して貸本ではない一般書店の流通に載せることに。これがまったく売れず返本の山。社長は手形偽造に手を出し逮捕されてしまう。横山泰三や加藤芳郎の風刺漫画は、誰もが知る朝日新聞や文藝春秋に載ってこそ価値があり、そうでなければ誰も目に留めない。ベッキー? アンジャッシュ渡部? みんな普通の人間ですよね。一芸に秀でているかも定かでない。メディア側の者たちが鍵を握っている。このエピソードは辰巳さんの漫画にも佐藤さんの自叙伝にも描かれるが、やはり松本さんは独特で社長がこのあと体調を崩して寝床に横たわりながら従業員・作家に指示を出す場面など素朴な絵柄に人間の生きる迫力がみなぎる。キャラよさらば。ウソをやめよう。人間を称えよう。
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