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Child Star─宮脇康之の圧縮された人生

2011-01-07 22:57:45 | メディア・芸能
『ケンちゃんの101回信じてよかった』宮脇康之(講談社、2004年1月刊)
1961年、東京生まれの著者は、3歳から児童劇団に所属し、TBS系のホームドラマ『チャコねえちゃん』の弟役に抜擢され、台詞回しなどリアルな子どもらしいかわいさで人気を呼ぶ。彼を主役とする『ケンちゃん』シリーズも、1969年から、1977年にケンちゃん役を2代目に引き継ぐまで8年間続いた。しかし、ケンちゃんというモンスターは、彼中心の暮らしを余儀なくされた宮脇家を崩壊に導き、子役時代にチヤホヤされ過ぎた彼自身の人生をも狂わすのだ。
1980年前後には学園ドラマなどで聞かれたその名前も、日活ロマンポルノに出演したことなどがきっかけで、聞かれなくなってゆき、以降彼は漫才師の付き人、ディスコの黒服、墓石の販売、居酒屋の皿洗い、ガスの検針など40近くの仕事を転々とする。沖縄にいた頃は1億円もの借金を背負ったが、完済。結婚して子どももでき、本書の出版当時には還元水生成器などのマルチ商法で成功を収めていたが、芸能界への夢は捨てきれず、芸名を「宮脇健」と改めている。



↑初の単独主演となった『ジャンケン・ケンちゃん』(1969~70年)のころの彼



↑妹のトコちゃん役に佐久間まゆみを迎えた『ケンちゃんトコちゃん』(1970~71年)のレコード。ずっと後に銀座のホステスになっていた佐久間さんと再会することに



↑『ケーキ屋ケンちゃん』(1972~73年)の1シーン。今は見られない、太ももむき出しの半ズボンがケンちゃんのトレードマークで、真冬の撮影はつらかったとか



↑彼がケンちゃんシリーズに出演していた末期のころ、父母役の牟田悌三さん、岸久美子さんと。子どもながら人気番組を支える宮脇氏への待遇は破格なもので、ロケ先のホテルで彼の部屋に招かれた牟田氏の顔がサッと曇ったという話も

きょうは引用しないが、毎度毎度画像を引用させてもらっている『闇金ウシジマくん』の「スーパータクシーくん」編でも、若いホストを乗せた主人公・諸星信也が、ホスト生活に捧げた20代を振り返って、「がんばってください…。ホストは、辞めてからの人生のほうが長いンですよ…」とつぶやく。
まして5歳や6歳のころから茶の間の人気をさらった名子役にとって、その後の人生がどのようなものに感じられるかは、われわれの想像を絶する。
「ケンちゃん」のイメージに縛られ、子役からの脱皮ができず、人気を失ってゆく彼に、手のひらを返したような態度をとるスタッフたち。ケンちゃんシリーズから去ってしばらくは、堀越高校に通い、『ナッキーはつむじ風』『翔んだカップル』などに出演していたようだが、ジャニー喜多川社長から誘われてジャニーズの合宿所にいたこともあるとか。
が、「あることが原因で、大事にしていた自分のドラムセットも洋服も全部そのままにして、合宿所を飛び出た」んだそうな。
ははァ~ん。察しはつきますよね。
でも、まあ、それを彼が我慢したところで、ジャニーズ系の歌って踊る人気者になることは難しかったろう。
子どもとしては、あいくるしい。しかし、大人の男としては、どうにもとりえのない…。
彼より3学年下のオラにとって、TVのケンちゃんシリーズは同年代の誰もが見ている、もちろんオラにも見逃せないものだったが、特に忘れられないシーンがある。
1974年の『ケンにいちゃん』から、弟のケンジ役に岡浩也を迎え、宮脇氏のケンイチと2人でTV局に見学に行く─というようなシーンだったと記憶する。そこにあったモニターに、数年前の『ケンちゃんトコちゃん』あたりの映像が映し出されて、不思議そうに覗き込むケンジを、「行こう!!」と促すケンイチ─。
これは現実!?過去!?未来!?
やがて1977年には宮脇氏がケンちゃんシリーズを去り、ケンジからケンイチとなった岡くんも1982年には去る。その半年後には、視聴率が下降していたシリーズ自体も終わってしまう。
最初の15年ほどで、すべてを生ききってしまい、それほどの栄光は2度とめぐって来ない、圧縮された人生。
過酷なことだが、あの時代に、たった一人が選ばれて、その人生を生きたのだった。



↑2010年夏、上石神井の居酒屋で、49歳の宮脇氏。マルチ商法のその後は定かでないが、しぶとく生きているようだ

※前身となったチャコちゃんシリーズを含む全ケンちゃんシリーズの放送データを集めたサイト
※同じく放送データを集めたブログ記事で、ことにレコードの画像が貴重
「芸能界を去った2代目ケンちゃん・岡浩也」(2011年11月3日の弊ブログ記事)

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1 コメント

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2011年で50才となる宮脇康之はどうしてる? (タクロウ)
2011-03-20 11:05:29
僕はTBSテレビ系のケンちゃんシリーズを見たのを懐かしく思う。1969年から1976年まで初代ケンちゃんを演じた宮脇康之が印象に残ったんだ。半ズボンはケンちゃんのトレードマークだったのが忘れられないな。小学生という設定でケンちゃんを演じた宮脇康之は今頃どうしてるか心配だ。15才でケンちゃんを卒業した後、何してるかわからない。
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