パニックSFの巨編「2012」をDVDで鑑賞しました。
2012年に地殻大変動が起こり、大地震や大津波、火山噴火などで人類絶滅の危機にさらされる、というマヤ文明発祥の終末論をそのまま映画にしたものです。
米国大統領科学顧問の若き地質学者が2009年に地殻大変動不可避の報告を大統領に上げ、世界は協調してノアの箱舟のような巨大な船を用意してその時に備えます。
船は米国船、ロシア船、中国船、英国船、フランス船、イタリア船、ドイツ船、カナダ船、日本船の9隻です。
一目で分かるとおり、G8+中国の9隻で、世界のお金持ちクラブの会員だけが生き残れるのです。
総数40万人。
この船で地殻変動が一段落するまで海でしのごうというお話です。
米国大統領を始めとする各国首脳の苦悩と、生き残りをかけて奮闘するある米国人家族のアドベンチャーを同時並行的に描きます。
2時間半の大作で、飽きさせない娯楽作に仕上がってはいるのですが、ハリウッドらしい子どもっぽい人類愛が全編を貫き、白けさせます。
一人が危機に陥ったからといって船の出港を停め、40万人の命を危険にさらすなど、指導者としてあるまじき行為がヒロイックに描かれます。
映画「スターリングラード」では、ドイツ軍と戦うソビエト兵の後ろに重機関銃でソビエト兵を狙う同じソビエト兵が登場します。
つまり、ドイツ軍に恐れをなして後退してくるソビエト兵を撃ち殺すためです。
「二百三高地」では、日露両軍の兵が白兵戦を演じている真っ最中に、ロシア軍の大砲が撃ち込まれます。
ロシア兵もろとも日本兵を殺害しようという魂胆で、当時の日本軍はこの驚くべき戦法に大いに悩まされたと聞きます。
絶滅寸前の人間を描くのに、善意の塊のような人間ばかり出てきて、極限状況で人間が何をなすか、それは悪といえるのか、といった、深い人間性への洞察が決定的に欠落しています。
金をかけた大作であることは認めますが、人間描写があまりに甘いと言わざるを得ません。
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2012 スタンダード版 [DVD] |
キウェテル・イジョフォー,ジョン・キューザック | |
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント |
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スターリングラード [DVD] |
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日本ヘラルド映画(PCH) |
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