●なぜ今? 原発汚染水対策、政府が470億円投入へ
ニュースフィア 日本に対する海外の反応を報道 Tue. September 3, 2013
政府は3日、福島第一原発の汚染水問題について、470億円の国費を投入する方針を発表した。茂木経産相は会見で、内訳として、凍土遮水壁の建設費用に320億円、汚染水浄化設備の改良費用に150億円を充てる方針を示した。
2日には、菅義偉官房長官が、汚染水問題は「すぐに解決しなければならない大きな問題」という認識を示すとともに、東電を政府が後方支援するという手法では、根本的解決は困難との判断を示していた。そのため、これまでの「パッチワーク」的な対応から、政府が前線に立って問題解決にあたると語っていた。
【実は振り切れていた線量計】
「毎週新たな漏水が噴き出す」福島第一原発では、放射性汚染水がもはや管理不能になっていると各紙は評する。
先週末には汚染水貯蔵タンク付近で毎時1800ミリシーベルトの高放射線が検出されたが、以前は100ミリシーベルトと発表されていた同地点の線量について、東電は、100ミリシーベルトが検出上限である機器を使用していたためであると認めた。
東電は1日2回、10人の作業員で行われていたタンク巡回を、2日からは1日4回、60人の作業員によるものに強化すると発表した。また、1800ミリシーベルトは到達距離が短く貫通力の弱いβ線が主体で、薄いアルミシート等で防御可能だと述べている。
現場周辺のタンクや地下室等には33万8000トン以上の汚染水があるとみられ、地下水の混入により量は増加しつつあり、保管場所は払底しつつある。
田中俊一・原子力規制委員長は2日、放射性物質をろ過するなどして基準濃度以下に持ち込んだうえで、海に管理放出することを示唆するに至った。
【予算の問題】
こうした現状を受けて、政府が本格介入するにあたり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、どこまで予算を掛ける覚悟があるかが重要だと論じた。
政府は昨年すでに東電に1兆円の資本注入を行っているが、東電はすでに汚染水処理に9600億円をかけている。
また、全国の原発停止を受けて、化石燃料の輸入には5兆円以上が費やされている。現在2つだけ稼働している原発も、ともに15日までには検査のため停止される。
なお、これほど漏水が頻発するのはタンクの製造コストを「ケチって」、丈夫な溶接式タンクを使わなかったからだと指摘されている。
●なぜ今、政府が汚染水対策に介入したのか?
•ニュースフィア 日本に対する海外の反応を報道 Thu. August 8, 2013
政府は7日、東京電力が行っている福島第1原子力発電所の汚染水流出対策に、直接介入する姿勢を示した。
東京電力は昨年、政府の資本注入により事実上国有化されたが、事故復旧にあたり政府が直接、予算を拠出することはなく、政府から東京電力に渡された資金も融資の形を取っていた。ウォール・ストリート・ジャーナル紙はこれを、「過去2年間の大部分、手の届く距離を保とうとした、日本政府のシフト」と評している。
【後手に回り続けた東電】
ニューヨーク・タイムズ紙は、主にこれまでの経緯に焦点を当てて報じている。
福島第1原発ではすでに、2011年にメルトダウンが発生した3原子炉の建屋からの汚染水を回収する努力が続けられていた。
東京電力は、背後の山地から流れてくる地下水については、地下深くを通るため問題ないと述べていたが、同社は5月22日、施設下の地下水から、安全基準の約10倍の放射性三重水素を検出したと報告した。同社は、汚染水がおそらく海に流出していると認識しつつも、その流出量を把握してはいなかった。
汚染水は、昨年12月以降のある時点で流れ始めたと考えられている。
ただ、専門家によれば、海へ流出した汚染水は、充分安全に希釈されうるレベルである。三重水素自体も比較的毒性が低いと考えられている。
しかし汚染水には他に、放射性のストロンチウムやセシウムも含まれていた。現在、流出ペースは1日300~400トンと推定されているが、総量は不明である。汚染源についても、施設地下の高濃度汚染水配管の可能性が高いとされるものの、正確には特定されていない。
同社は6月、施設と海の間の土中に水ガラスを注入して防壁とした。しかし、せき止められて蓄積する汚染水は、最終的に防壁を越えて流出しただけであった。それどころか、地下水位が上がり続ければ、汚染水が地表に達したり、回収・貯蔵されている高濃度汚染水に接触する恐れも生じる。
各紙は、同社の対応が場当たり的なものに終始してきたことや、情報を早期に開示しない姿勢が、批判を集めていると報じる。原子力規制庁の金城慎司・対策室長は、「東電は、この危機が緊急であるという十分な感覚を欠いています」と述べた。
【東電任せでは難しい「凍土作戦」】
現在検討されている対策は、1日あたり100トン程度の水の汲み出しのほか、化学薬品を用いて地盤を凍結させることであるが、少なくとも400億円を要するとみられ、実績もない。
ここへ至って政府は、東京電力独力では対応困難と判断し、介入を決断したと報じられている。
菅官房長官は、「この規模の遮蔽壁の構築は、かつて行われたことがありません」「これを成し遂げるには、国が一歩前進し、手を貸す必要があります」と述べた。安倍首相も、汚染源特定作業の強化および拡散防止措置を、東京電力のほか規制当局および担当大臣に要請したと明らかにし、「東京電力に任せるだけではいけません。政府が対策を考え出す必要があります」と述べた。経済省の新川達也・原発事故収束対応室長は、対策が2015年7月までに完了されるべきだと述べている。
●【汚染水、海に流出】東電対応に限界、政府が国費で対策へ
ニュースフィア 日本に対する海外の反応を報道 Wed. August 7, 2013
1年以上も前から警鐘が鳴らされていた問題が、ついに、専門家の「非常事態」のお墨付きを得るにいたったようだ。
福島第一発電所で、放射性物質を含んだ汚染水が海洋に流出している問題について、原子力規制庁の金城慎司東京電力福島第一原子力発電所事故対応室長は6日、ロイターのインタビューでその緊急性に憂慮を示し、「東電には、この危機に対する切迫感が欠如している」と厳しく糾弾した。
【地下水汚染の原因は?】
2年前の震災以降、東電は放射線「汚染水」の処置に苦慮してきた。原子炉の冷却に使われる、放射濃度の極めて高い原子炉建屋の水については、汲み出して敷地内のタンクに詰めることで「封入」してきたはずだった。
ところが、数ヶ月前には、原子炉付近で採取した地下水から高濃度の放射性物質が検出され、さらに、ここにきて、この水が海に漏れ出ている公算が高いと明らかにされたのだ。
従来、発電所の背後の山々から染み出し、発電所の地下を通って海に流れ出す地下水に関しては、東電は「地下深くを通るため、汚染されない」との見方を示してきた。
この地下水が汚染された原因について、専門家は、敷地海側のトレンチ(地下道)にたまった水が漏えい源であるとの見方を示しているという。根拠は、先月の採取時に検出された放射性セシウムの濃度が、事故直後の平成23年4月に検出された値と合致すること。トレンチから漏れて、底部から地中に拡散しているとの憶測だ。
なお、トレンチ内の汚染水1リットルあたり、セシウム137(半減期約30年)は16億ベクレルだった。原子力基本法に基づく国の基準値は1リットルあたり90ベクレルである。
【東電の対応は後手後手】
地下水から放射性物質が検出された後、東電は海への流出を防ぐため、護岸沿いに水ガラスと呼ぶ特殊な薬液を注入して土を固め、遮水壁をつくる工事を進めていた。
ところが、この遮水壁が「ダム」の役を果たして水位を上昇させ、深度地下1.8mに設置された遮水壁を超えて海に流れ出たのが今回の顛末と見られている。東電は遮水壁の増強と1日あたり100トンの汚染地下水の汲み出しなどの対応策を協議しているが、敷地内を埋め尽くさんばかりの汚染水のタンクを考えれば、これらの策がしょせん、「その場しのぎ」に過ぎないのは明白だと専門家は指摘している。
そもそも、今回の発表にしても、細切れのデータを小出しにするいつもの手法で、煙幕を張るような態度には非難が集まっているという。すでに、東電の対応能力を超えているとの声もあるようだ。
【大丈夫なのか? 太平洋への放射性物質の流出】
気になる、放射性物質の流出量とその危険性だが、ストロンチウム、セシウム、トリチウムのいずれについても、平常に稼動している原子力発電所でも許される程度の量であり、太平洋の広大さを思えば、人間の健康には問題のないレベルだという。
グローバル・ポストは、震災後、カリフォルニアの雨水、ミルク、植物から、福島原発から放出された放射性物質を検出した米カリフォルニア大学バークレー校原子力工学科のエリック・ノーマン教授も、この点には太鼓判を押していると報じている。
しかし、現時点では問題ないとしても、収束の目処が立たないことを危険視する声は高いようだ。 東京大学大気海洋研究所の植松光夫教授は、「流出した汚染水の正確な濃度と量がわかるまでは、海への影響を云々するわけにはいかない」との見解を示しているという。
【東電の限界? 対応の主導権は政府に移行か】
・・・(略)・・・
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