12月6日(水) 晴。
3日前に買った『12 Gardens Live』はほとんど聴けずライヴを迎えてしまった。ソニーのアーティスト・ページに東京ドームのセットリストが出ていた。できるだけ頭に入れて、後は楽しむしかない。
15分ほど押してプレリュードがながれた。ステージはひな壇になっていて、上の段の向かって左から、キーボードのDavid Rosenthal、ドラムのChuck Burgi、パーカッション、サックスのCrystal Taliefelo。下段にギターのTommy Byrnes、ピアノのBilly Joel、ベースのAndy Cichon。そこにトランペットのCarl FischerとサックスのRichie Cannantaが曲によって加わった。
ステージは遠く、双眼鏡で見てもあまりよく見えない。ステージの両脇にモニターヴィジョンがあったので、それを見るしかなかった。ライヴの構成は『12 Gardens Live』とほとんど変わらない。時々、知らないうちにビリー・ジョエルのピアノの向きが変わった。左向いて歌っていたのに、気づいたら右向いて歌っていた。何度か向きが変わったが、最後まで変わる瞬間が見えなかった。
ビリー・ジョエルは紺のブレザーを着ていた。その下は黒のシャツ。昔読んだ雑誌に「ライヴでネクタイをするのは聴きに来てくれたファンへの礼儀なんだ」というコメントが載っていた。もうネクタイはしてないが聴衆に礼儀を欠くような態度ではない。とても愛想がよく「1970年代はまだ髪の毛があった。もじゃもじゃだった」と話した(笑)。
「Honesty」ははじめて聴いたビリー・ジョエルの曲だと思う。ココアのCMソングとして使われていた。確か僕が中学二年の頃だ。あれから四半世紀が経って、ライヴでその曲を聴いてるというのは感慨深かった。いろいろと思い出していた。「Say Goodbye To Hollywood」はロニー・スペクターに提供したのだっけ? フィル・スペクターにリスペクトを表した曲だったと思うが、「ウォール・オブ・サウンド」をはじめて聴いたのがあの曲だった。懐かしい。「Say Goodbye To Hollywood」も聴きたかった。
「New York State Of Mind 」はセプテンバー・イレブンの直後に製作されたチャリティー番組では弾き語りで披露されていた。まさかこの曲をライヴで聴くことがあるなんて、あの時は思いもしなかったので、一際感激した。サックスをフィーチャーしたR&Bスタイルで、ビリー・ジョエルもソウルフルに歌った。ブルー・アイド・ソウルというとホール&オーツとビリー・ジョエルだという思いが僕の中にはある。
「Just The Way You Are 」は高校二年の時に英語の授業で聴いた。「奇麗な発音なので聴いてほしい」と新任の女教師がラジカセでかけた。そんな記憶が蘇えった。今まで思い出したこともなかったのに。
僕がはじめて買ったビリー・ジョエルのアルバムは『An Innocent Man』だった。1983年、僕は17歳。村上龍が『69 sixty-nine』で書いたように、人生で最も楽しかった一年だったかもしれない。もう一度戻りたいかと問われたなら、きっと首を横に振るだろうけれど。将来に対して不安を抱いて、悩んでいる少年がそこにいるだけだ。そんな時代に戻りたくはない。ビリー・ジョエルの『An Innocent Man』がその頃の僕をそっと支えてくれた。ベン E. キングの「Spanish Harlem」のように歌った「An Innocent Man」。まだまだこのアルバムから続けて歌ってほしかった。だけどそういうわけにもいかなかった。このライヴもまた「成長」に関するイシューなのだ。
「The River Of Dreams」も好きな曲だ。僕が好きなビリー・ジョエルの曲は大抵R&Bの影響を受けている。この曲はドゥーワップ。はじめて聴いた時から好きだった。1993年のアルバム『The River Of Dreams』を最後にビリー・ジョエルはオリジナル・アルバムを出してないらしい。
ステージにサンタクロースが現れビリー・ジョエルにギターを手渡す。AC/DCの「Highway To Hell」をカヴァー。この曲だけはヴォーカルとピアノを他人に譲った。ステージの前まで出てギターを弾くビリー・ジョエルにスポットライトがあたった。
ドーム・コンサートのキラキラする照明。マイク・スタンドのパフォーマンスで盛り上がりも最高潮に。アンコールの盛大なアプローズの中でビリー・ジョエルは少し困惑したジェスチャーを見せた。「もうそろそろ行かないと...」と腕時計を見る仕草。でもうれしそうだ。「Piano Man」は唱歌「さくら」の前奏付き。最後は大合唱となった。
■Billy Joel In Concert 2006
2006年12月6日(水) 京セラドーム大阪
スタンド3塁側14通路下段3列68番
Set List
01 Angry Young Man
02 My Life
03 Everybody Loves You Now
04 Honesty
05 The Entertainer
06 Zanzibar
07 New York State Of Mind
08 Don't Ask Me Why
09 Allentown
10 The Stranger
11 Just The Way You Are
12 Movin' Out (Anthony's Song)
13 An Innocent Man
14 Miani2017 (I've Seen The Lights Go Out On Broadway)
15 She's Always A Woman
16 I Go To Extremes
17 The River Of Dreams
18 Highway To Hell [AC/DC]
19 We Didn't Start The Fire
20 Big Shot
21 It's Still Rock And Roll
22 You May Be Right
Encore
23 Only The Good Die Young
24 Piano Man