初日のライブを盛況のうちに終了したミュージシャンたちは、去年と同じ浪岡市内の居酒屋にてやっと今夜の夕食。
お店に着いたのは午後10時を大幅にまわっていて、みんなおなかペコペコ状態だった。
海産物が苦手で一切食べられない他のバンドメンバーとはちがい、
カルロスは大の寿司、お刺身、日本酒好き。お箸使いも慣れたもの。
すでにちょいといい気分になっていた浪岡の商工会の会長さんが乾杯の音頭をとり、やっとみんながリラックスしはじめたそのときだった。
副会長が一升瓶を持ってふらふらとミュージシャンのコップに日本酒をついで歩き、こともあろうに「一気飲み」を強要し始めた。目の焦点は既に合っていなかった。
日本の飲み会や接待では当たり前の風景かもしれないが、アメリカでは人にお酒を強要する、という文化がない。飲めない人、事情で飲まない人、飲みたくない気分の人もいるからすべては自分で判断するのだ。
彼らは副会長のしつこい勧めもあってお付き合いでおちょこで“一気”をしてくれ、とりあえず副会長の顔を立ててくれた。
彼はその後私にもコップ酒の一気をしつこく強要するので、「こういういいお酒はゆっくり飲みたいので、やめてもらえませんか?」とやんわり断ったが、全く聞く耳持たず。
私とて体育会出身、こういうしきたりはわからぬでもないがあまりにも度を越しすぎている。
これに気をよくしたこの副会長、今度はどこからかヒノキの大盃をもってきてそこになみなみと焼酎を注ぎ始めた。一本分を丸々注いだ大盃を、千鳥足で歩きながらそこらじゅうの人たちに回し飲みさせ始めた。
かなりやばい雰囲気にまわりはどん引き。
(なんで誰も止めないんだよ!会長はなにやってんだ!)
案の定、誰も飲んでくれないことに業を煮やしたこの副会長、頼んでもいないのに今度は自分で杯を一気に飲み始めた。
ああ、もうだめだ。この人完全に自爆体制に突入している。
年に一度、オラが町の夏祭りに国内外から有名ミュージシャンがやってくるのがよっぽど待ち遠しくて、うれしくて、この人たちはきっと会場で昼間っからガンガン飲み続けていたに違いない。
挙句の果てに焼酎一本を一気したものだから、彼の胃はもちろん逆噴射寸前だった。
そして、その悪い予感は一気に現実となった。
しばらく席にすわって静かにぐるぐるしていた副会長、いきなりの大リバース大会。
それも、よりによってシカゴのミュージシャンの席の真ん前で、大盃に・・・。
デミトリアはあまりのエグさに席を立ち、「もうおしまい、帰る」と部屋を出て行った。もちろん、BillもPookyも、目の前のまだ箸もつけていない食べ物に手を伸ばす気も失い、部屋を出て行った。
副会長側の列に座っていた私は、同じくピーターと別方向を向いてしゃべっていたのでこの事態にしばらく気づかなかったが、気づいたときはそのあたりはもう大変なことになっていた。
もちろん、宴半ば(というか始まったばかり)で強制終了。
まだ手つかずのお寿司の山を恨めしそうに眺めながら、カルロスは「なんてもったいたいことをするんだ」と嘆いていた。
カルロスと数名はそのあと、青森市内に帰ってから飲み直しに出かけたそうだが、私もあとの人たちもすっかり気持ちが萎えてそのまま就寝・・・。
おなか減ったよー。
しかし、これは笑いごとではすまれない。今まで経験した中で最悪の夜だった。
最大の疑問は、どうして誰一人として彼を止めなかったのか?だ。
上司だから?偉い人だから?年長者だから?いやいやそういう問題ではないでしょーよ。
明らかに度を過ぎた行動をしていて、それが全体のムードをぶち壊し、ゲストを不快にさせているということは誰の目からも明らかなはず。
私が止めても聞かなかったのだから、内部の人から助言するか別の部屋に連れて行くかするべきだったと思う。
唯一の救い(?)は、この事件のあまりのインパクトのおかげで、シカゴ組の中ではその後挨拶代わりに“嘔吐ごっこ”が大流行。ことあるごとに「あれはすごかった。今までので一番えげつない経験だった」と語り草になっていった。
仲良しのBill、デミトリア、Pooky
この直後に悪夢は起こった・・・
いいんだか悪いんだか。
大都会にはないのんびりとしたホスピタリティーが売りのこのフェスティバルだが、こういう一部の“田舎もん丸出し”の人たち(特に、我が物顔の上層部)のマナーの悪さはいただけない。
現場で汗流して必死に頑張っているスタッフの評判にまで傷がついてかわいそうだ。
上層部こそ、きちんとした大人のふるまいをして運営を手助けするべきだろう。
そんなことを考えながら、ここ二日間で感じたカルロスの、“理想のボス”ぶりとの違いをつくづく痛感した。
明日は二日目にしてフェス最終日。いい日になりますように。
・・・つづく
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