7月20日
ブルースフェスティバル2日目。
昨日とはうって変わって、今日は会場を“海のステージ”に移しての大きなライブだ。
“山のステージ”もほんわかしてよかったけれど、ここは海辺に面した広くて大きいステージでいかにも夏の野外コンサートという雰囲気が漂っていて、中にいるだけでわくわくする。
青森で3日目を迎えたミュージシャンたちは幾分生活パターンにも慣れ、午前中が自由時間ということもあってそれぞれホテルの近所を散歩に行ったりしてつかの間の観光を楽しんでいたようだった。
ルリーバンドの“影のボス”でもあるマシューは、羽田での荷物のごたごた事件からかなりピリピリムードで仏頂面だったけれど、着いたその日の晩に大好きなお刺身と日本酒を口にしてから急にリラックス。
朝、たまたまホテルの近所を散歩中の彼とばったり会って一緒に商店街を歩きながらしゃべっているうち、実はこの人はとっても責任感が強くてハートの温かい人なんだなーとしみじみ親近感が湧いてきた。
日本の雑貨にも興味あるようだったし、偶然見つけた100円ショップに案内したらこれがドツボにはまった様子。
シカゴでは到底見かけることのできない珍しい雑貨を1ドルちょっとで買えるとあって「明日は絶対戻ってくる!」と大興奮していた。
シカゴからずっと行動を共にしている私も、この頃には今回のメンバーが各々どういう性格の人なのか、どういう行動パターンをとる人なのか、何に興味があるのかをすっかり把握できていて、コミュニケーションが随分楽になった。
マシューと同じくルリーバンドのビル・シムズは、日本食をあまり受け付けない他のミュージシャンと違い、大の刺身好き、日本酒好きで食に関しては相当なチャレンジャーであることがわかっていたので、主催側のひとりであるSenさんがこの日のお昼ご飯に二人を青森市内で一番うまいというお寿司屋に連れて行くことになり、私も一緒にちゃっかりついていった。
日本人でもそうは食べらない味に、もう全員感動で口がと~ろとろ。
青森の銘酒「喜久泉」を一口飲んだとたん、マシューの顔もべろべろ。
マシューの機嫌がいいと万事こと易し。
今回ただ一人NYから参加したビルは、最高にカッコよくてかわいくてお茶目で紳士な人。
★ ★
午後からはリハーサル。今日のステージはこんな感じ。
すぐうしろに広がる青い海、青い空が目にすがすがしい。
ただ、海風が強くて体感気温は20℃を下回っていた。さっぶ~
5時半過ぎ、青森市長室長のご挨拶でフェスティバルが開幕。
そして、元シカゴイベント室長でこのイベントを第1回目から支援してくださっているバリー・ドリンズさんに感謝状が贈られた。
彼はシカゴ・ブルース・フェスティバルの生みの親でもあり、シカゴではすべてのミュージシャンからリスペクトされている人物。
そして、な・な・なんと!そのあとに私にもサプライズで感謝状が。
「シカゴにおいてジャパン・ブルース・フェスティバルの報道を通じシカゴ市と青森市の懸け橋となり、深い理解と協力でイベント運営に深く寄与した」功績を称えられたようです。
身に余る光栄です。
こちらこそ、私のような人間にこんな機会を与えてただいてお礼の言葉もないくらいです。
6時。
ルーリーバンド&マシューのステージが始まる。
昨日のエレクトリック・ブルースからうって変わって、最新作「The Devil Ain't Got No Music」をヒューチャーした全編アコースティックバージョン。
ルーリーの太く、ゴスペルな声が響き渡ると、また全身に鳥肌。
この人の歌はどうしてこんなに私を熱くさせるのだろう・・・
The Lurrie Bell Blues Band w/Special guest Matthew Skoller
(ザ・ローリー・ベル・ブルース・バンド・ウィズ・スペシャル・ゲスト・マシュー・スコーラー)
Lurrie Bell(Vo,Gt) ローリー・ベル
Willie Hayes(Ds) ウィリー・ヘイズ
Felton Crews(B) フェルトン・クルーズ
Bill Sims Jr(Key) ビル・シムズ・ジュニア
Matthew Skoller(Harp) マシュー・スコーラー
大都会でのフェスティバルと違って、お客さんは音楽フリークなどではないローカルなご家族がほとんど。
世界の一流ミュージシャンの演奏をバックに、焼き鳥を食べる、こんな贅沢がいったいどこにあるというのだ!
パフォーマンス終了後、彼らの楽しみはなんといっても飲むこと。
控室でひとり、コーラを飲みながら静かにすごすことが好きなルーリーとは逆に、他のメンバーは会場内の屋台をぶらぶらしながら観客と写真を一緒に撮ったりしてとにかく陽気。
いわゆるプロモーターという人たちが介在して何もかも厳しく仕切りたがる都会のフェスティバルとは全く違う。
ミュージシャンが焼き肉を片手に日本酒をぐいぐい飲りながら、次のパフォーマンスを会場から見守る、
こういう境界線のなさは地方ならではで、見ていてもほのぼのする。(ちょっとやきもきするけど)
そういう意味でもこれはアメリカのフェスティバルに限りなく近い気がする。
一流の音楽に触れて育った青森の子供たちのなかから、将来一流のブルースミュージシャンが産まれるに違いない。
何故か憎めない大男フェルトン。
80年代にはマイルス・デイヴィスのバンドメンバーとしてアルバムに参加しているスーパーミュージシャンでもある。
誰にでも「君に恋をしてしまったみたいだ」などと言うやつ(笑)。
私も何気に彼らの行動を監視しつつ、合間には一緒に飲んで楽しんでいた。
ウィリー・ヘイズ、ビル・シムズ。このふたりはとにかく優しくて、包容力があって、あたたかくて大好き。
そして、ブルース・マシーン・バンドが始まった。
スペシャルゲストはこの方!
ギタリストの山本恭司さん
この日の朝、青森入りしてそのまま軽い打ち合わせだけでいきなりのライブ。
「曲を事前に聞いて感覚をつかんでいたからね」とこともなげにおっしゃる。さすがプロだ。
しかし、この日本のスーパースターもブルース・マシーンの中ではこの日初めて会うギタリストにすぎず、楽屋でもちょこんと隅の方でほかのメンバーに話しかけられることもなく座っていたそうだ。
日本ではまず普段はありえないシチュエーションに、本人曰く「新鮮だった」。
とても謙虚ないい人なのだ。
★ ★
打ち上げ会場の居酒屋では、恭司さんはもうすっかりバンドメンバーに溶け込んでいた。
「楽屋では口もろくにきいてもらえなかったのに、演奏をしたあとは認め合え、打ち解けあえる、それが音楽のいいところだよね~」と。
この場で、急きょ明日のLurrie BandへのSit inが決まったそうだ。
少々飲みすぎたのか、最後に店を点検したら忘れ物が続出。
特にBill Simsは何でも忘れてきちゃう。iPhoneにメガネに上着。
ホテルに帰ったら今度はロビーにギターが置き去りになっていた。
それをひとつづつ部屋にお届けにあがると、この人たちときたらたいがい部屋で飲み直しながら自分の音楽の世界に浸っている。これこそ、ミュージシャン(音楽ばか)。
飽きる、明日のために寝る、ということばはこの人たちにはないのだ。
Billの部屋をノックして忘れ物ですよ~と届けると、「今ちょうどコルトレーンとジョニー・ハートマンを聴いているんだ。絶対聞いていけ。ちょっとでいいから」といって手招きされる。
そういえば私がJazzをやっていると知って、どうしても聴かせたい曲があると言っていたっけ。
んもうー、ちょっとだけよ。
またここでバーボンをストレートで一緒に飲まされ、椅子に腰かけてジョニー・ハートマンをじっくりと聴く。
「最高だろう?」
そういって何度も同じ曲を口ずさみながら聴くBill。なんでも毎日、30年来聴き続けているという。
やっぱりこの人たちは凡人とは違うのだ。
私の部屋(添乗員部屋)はミュージシャンたちと同じフロアの一番奥なので、必ず彼らの部屋の前を通るのだが、各々の部屋からはいろんなジャンルの音楽が聴こえてくる。
Bluesバンドとしてツアーをしているものの、彼らはBluesに特化して活動をしているとは限らない。それもあって、普段聴いている音楽も自分のルーツに近いものを好んでいるようだ。
Billが部屋ではJazzを聴いているように、Felton Crewsはアース・ウィンド・アンド・ファイヤーなどのソウル・ミュージックを愛聴しているし、ココバンドのドラマー、Brian T Parkerは、彼が一番好きだというマイケル・ジャクソンやゴスペル、R&Bなどを聴いて自分の世界に浸っている。
とにかくもう、生活のすべてが音楽漬けなのだ。
彼らにとってはそれが当たり前なのだろうけれど、ここまでのレベルになる人たちの神髄を垣間見た気がした。
ブルースフェスティバル2日目。
昨日とはうって変わって、今日は会場を“海のステージ”に移しての大きなライブだ。
“山のステージ”もほんわかしてよかったけれど、ここは海辺に面した広くて大きいステージでいかにも夏の野外コンサートという雰囲気が漂っていて、中にいるだけでわくわくする。
青森で3日目を迎えたミュージシャンたちは幾分生活パターンにも慣れ、午前中が自由時間ということもあってそれぞれホテルの近所を散歩に行ったりしてつかの間の観光を楽しんでいたようだった。
ルリーバンドの“影のボス”でもあるマシューは、羽田での荷物のごたごた事件からかなりピリピリムードで仏頂面だったけれど、着いたその日の晩に大好きなお刺身と日本酒を口にしてから急にリラックス。
朝、たまたまホテルの近所を散歩中の彼とばったり会って一緒に商店街を歩きながらしゃべっているうち、実はこの人はとっても責任感が強くてハートの温かい人なんだなーとしみじみ親近感が湧いてきた。
日本の雑貨にも興味あるようだったし、偶然見つけた100円ショップに案内したらこれがドツボにはまった様子。
シカゴでは到底見かけることのできない珍しい雑貨を1ドルちょっとで買えるとあって「明日は絶対戻ってくる!」と大興奮していた。
シカゴからずっと行動を共にしている私も、この頃には今回のメンバーが各々どういう性格の人なのか、どういう行動パターンをとる人なのか、何に興味があるのかをすっかり把握できていて、コミュニケーションが随分楽になった。
マシューと同じくルリーバンドのビル・シムズは、日本食をあまり受け付けない他のミュージシャンと違い、大の刺身好き、日本酒好きで食に関しては相当なチャレンジャーであることがわかっていたので、主催側のひとりであるSenさんがこの日のお昼ご飯に二人を青森市内で一番うまいというお寿司屋に連れて行くことになり、私も一緒にちゃっかりついていった。
日本人でもそうは食べらない味に、もう全員感動で口がと~ろとろ。
青森の銘酒「喜久泉」を一口飲んだとたん、マシューの顔もべろべろ。
マシューの機嫌がいいと万事こと易し。
今回ただ一人NYから参加したビルは、最高にカッコよくてかわいくてお茶目で紳士な人。
★ ★
午後からはリハーサル。今日のステージはこんな感じ。
すぐうしろに広がる青い海、青い空が目にすがすがしい。
ただ、海風が強くて体感気温は20℃を下回っていた。さっぶ~
5時半過ぎ、青森市長室長のご挨拶でフェスティバルが開幕。
そして、元シカゴイベント室長でこのイベントを第1回目から支援してくださっているバリー・ドリンズさんに感謝状が贈られた。
彼はシカゴ・ブルース・フェスティバルの生みの親でもあり、シカゴではすべてのミュージシャンからリスペクトされている人物。
そして、な・な・なんと!そのあとに私にもサプライズで感謝状が。
「シカゴにおいてジャパン・ブルース・フェスティバルの報道を通じシカゴ市と青森市の懸け橋となり、深い理解と協力でイベント運営に深く寄与した」功績を称えられたようです。
身に余る光栄です。
こちらこそ、私のような人間にこんな機会を与えてただいてお礼の言葉もないくらいです。
6時。
ルーリーバンド&マシューのステージが始まる。
昨日のエレクトリック・ブルースからうって変わって、最新作「The Devil Ain't Got No Music」をヒューチャーした全編アコースティックバージョン。
ルーリーの太く、ゴスペルな声が響き渡ると、また全身に鳥肌。
この人の歌はどうしてこんなに私を熱くさせるのだろう・・・
The Lurrie Bell Blues Band w/Special guest Matthew Skoller
(ザ・ローリー・ベル・ブルース・バンド・ウィズ・スペシャル・ゲスト・マシュー・スコーラー)
Lurrie Bell(Vo,Gt) ローリー・ベル
Willie Hayes(Ds) ウィリー・ヘイズ
Felton Crews(B) フェルトン・クルーズ
Bill Sims Jr(Key) ビル・シムズ・ジュニア
Matthew Skoller(Harp) マシュー・スコーラー
大都会でのフェスティバルと違って、お客さんは音楽フリークなどではないローカルなご家族がほとんど。
世界の一流ミュージシャンの演奏をバックに、焼き鳥を食べる、こんな贅沢がいったいどこにあるというのだ!
パフォーマンス終了後、彼らの楽しみはなんといっても飲むこと。
控室でひとり、コーラを飲みながら静かにすごすことが好きなルーリーとは逆に、他のメンバーは会場内の屋台をぶらぶらしながら観客と写真を一緒に撮ったりしてとにかく陽気。
いわゆるプロモーターという人たちが介在して何もかも厳しく仕切りたがる都会のフェスティバルとは全く違う。
ミュージシャンが焼き肉を片手に日本酒をぐいぐい飲りながら、次のパフォーマンスを会場から見守る、
こういう境界線のなさは地方ならではで、見ていてもほのぼのする。(ちょっとやきもきするけど)
そういう意味でもこれはアメリカのフェスティバルに限りなく近い気がする。
一流の音楽に触れて育った青森の子供たちのなかから、将来一流のブルースミュージシャンが産まれるに違いない。
何故か憎めない大男フェルトン。
80年代にはマイルス・デイヴィスのバンドメンバーとしてアルバムに参加しているスーパーミュージシャンでもある。
誰にでも「君に恋をしてしまったみたいだ」などと言うやつ(笑)。
私も何気に彼らの行動を監視しつつ、合間には一緒に飲んで楽しんでいた。
ウィリー・ヘイズ、ビル・シムズ。このふたりはとにかく優しくて、包容力があって、あたたかくて大好き。
そして、ブルース・マシーン・バンドが始まった。
スペシャルゲストはこの方!
ギタリストの山本恭司さん
この日の朝、青森入りしてそのまま軽い打ち合わせだけでいきなりのライブ。
「曲を事前に聞いて感覚をつかんでいたからね」とこともなげにおっしゃる。さすがプロだ。
しかし、この日本のスーパースターもブルース・マシーンの中ではこの日初めて会うギタリストにすぎず、楽屋でもちょこんと隅の方でほかのメンバーに話しかけられることもなく座っていたそうだ。
日本ではまず普段はありえないシチュエーションに、本人曰く「新鮮だった」。
とても謙虚ないい人なのだ。
★ ★
打ち上げ会場の居酒屋では、恭司さんはもうすっかりバンドメンバーに溶け込んでいた。
「楽屋では口もろくにきいてもらえなかったのに、演奏をしたあとは認め合え、打ち解けあえる、それが音楽のいいところだよね~」と。
この場で、急きょ明日のLurrie BandへのSit inが決まったそうだ。
少々飲みすぎたのか、最後に店を点検したら忘れ物が続出。
特にBill Simsは何でも忘れてきちゃう。iPhoneにメガネに上着。
ホテルに帰ったら今度はロビーにギターが置き去りになっていた。
それをひとつづつ部屋にお届けにあがると、この人たちときたらたいがい部屋で飲み直しながら自分の音楽の世界に浸っている。これこそ、ミュージシャン(音楽ばか)。
飽きる、明日のために寝る、ということばはこの人たちにはないのだ。
Billの部屋をノックして忘れ物ですよ~と届けると、「今ちょうどコルトレーンとジョニー・ハートマンを聴いているんだ。絶対聞いていけ。ちょっとでいいから」といって手招きされる。
そういえば私がJazzをやっていると知って、どうしても聴かせたい曲があると言っていたっけ。
んもうー、ちょっとだけよ。
またここでバーボンをストレートで一緒に飲まされ、椅子に腰かけてジョニー・ハートマンをじっくりと聴く。
「最高だろう?」
そういって何度も同じ曲を口ずさみながら聴くBill。なんでも毎日、30年来聴き続けているという。
やっぱりこの人たちは凡人とは違うのだ。
私の部屋(添乗員部屋)はミュージシャンたちと同じフロアの一番奥なので、必ず彼らの部屋の前を通るのだが、各々の部屋からはいろんなジャンルの音楽が聴こえてくる。
Bluesバンドとしてツアーをしているものの、彼らはBluesに特化して活動をしているとは限らない。それもあって、普段聴いている音楽も自分のルーツに近いものを好んでいるようだ。
Billが部屋ではJazzを聴いているように、Felton Crewsはアース・ウィンド・アンド・ファイヤーなどのソウル・ミュージックを愛聴しているし、ココバンドのドラマー、Brian T Parkerは、彼が一番好きだというマイケル・ジャクソンやゴスペル、R&Bなどを聴いて自分の世界に浸っている。
とにかくもう、生活のすべてが音楽漬けなのだ。
彼らにとってはそれが当たり前なのだろうけれど、ここまでのレベルになる人たちの神髄を垣間見た気がした。