私の本棚にあるその本の存在は重々承知をしているのだが、445ページに及ぶ大部ではあるが、2~3ページほど読んだまま十数年近くほったらかしの状態である。
吉村昭の小説「落日の宴-勘定奉行川路聖謨」なのだが、この本を購入するについてはちゃんとした理由があった。
細川藩陪臣(溝口蔵人家臣)である旧姓江口・窪田治部右衛門なる人物が、藩を出奔し、従兄弟である旗本川路聖謨をたよって川路の知人の下働きなどをしながら、ついには田安家家臣となり、ついには旗本となっている。
そして功なり名を遂げ、かって川路が努めた「日田奉行」となった人物である。幕末の時のいたずらともいえる。
そんな治部左衛門のことが取り上げられているのではないかと思い、購入したものである。
熊本の方でも「窪田治部左衛門」という人物の事をご存じの方は多くはあるまい。日田奉行を勤めたが評判は極めて悪い。
長州藩が小倉に攻め入ったときに、窪田はこともあろうに奉行所を放棄して逃げ出している。
そんな窪田については、井上智重氏著「異風者伝」に詳しいのでお読みいただきたい。
再来年の大河ドラマには「小栗上野介」が登場するが、幕末の江戸幕府を支えた能吏として並び称される人物だろうと思う。
「ほこりを払う」必要もないほどきれいな体裁を保っているこの本、はたして窪田の事が出てくるかどうかは良くわからないが、十数年ぶりに精読しようと本棚から取り出した。
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