■手討達之扣－（19－1）清原寿吉郎・貴田小十郎手討不覺

今回も21頁に及ぶ記録が残されている。関係者の数が多く関係を承知するのに難儀するほどである。
清原寿吉郎と貴田小十郎が病乱の久光丑蔵に不意打ちを受けたものだが、夜分のことであり加害者を見失いその場では討ち取ることが
できず不覚を取った。この事件は江戸時代の「加害者に刑事的責任能力なし」という結果となったが、かえって大けがをし手討に不覚
があった被害者は禄を失っている。
数回にわたりご紹介する。

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33、清原寿吉郎・貴田小十郎手討不覺

　　　文化七年有吉清九郎組
　　　　　　御内意之覚
　　　私共組合清原寿吉郎儀去ル十日之夜八時分ゟ緒方新右衛門と同道仕水前寺稲荷江参詣仕罷帰候
　　　節途中ゟ栖本内蔵次同道栖本冨太・田邊平兵衛嫡子田邊孫右衛門・吉富吉次郎養子吉富五左衛門相加り其後
　　　貴田権内名跡相続貴田小十郎相加り帰懸是法村miru永山八郎助抱屋敷江右八郎助嫡子永山富八罷
　　　越居候ニ付寿吉郎連不残立寄申候処右寿吉郎連立寄候以前追々相見へ居候面々も有之候處
　　　最早其自分之引取ニ相成候面々も候得共過半は残に相成申候 尤罷残候面々も引取際ニ相成候得共
　　　寿吉郎一列暫ク相滞居申候 夜ニ入六時過ぎ寿吉郎一列并相残候面々も八郎助抱屋敷一同
　　　ニ罷立寿吉郎一列之内新右衛門・富太・五左衛門は少シ先ニ立参申候処寿吉郎・小十郎儀は半丁程も後レ
　　　跡ゟ参居申候哉然處何者か物騒敷有之候付右三人立帰り少々引通候内小十郎不軽怪我
　　　いたし候由ニ而券歩ニ相成候間右三人先ツ介抱いたし冨太・五左衛門両人は小十郎江付添居
　　　新左衛門は小十郎怪我之様子見繕候上諸々為見■引かへし候処久光八助育之従弟久光丑蔵病乱之
　　　躰ニ付取押置候由的場甚左衛門二男的場泰次ゟ噂仕候ニ付承候処小十郎怪我致せ候者
　　　全丑蔵と見込申候 右ニ付新右衛門儀は右八郎助抱屋敷江立けへり富八江右之趣咄合候内右屋敷■
　　　家御庭方荒仕子武助と申者私方へ血まみれに相成候人見へ申候段新右衛門・富八江申聞候ニ付直ニ
　　　両人罷越見候得は連寿吉郎ニ怪我いたさせ候者是以丑蔵と見込申候 寿吉郎怪我は月
　　　代（ｻｶﾔｷ）之内ゟ耳之後にかけ是以不軽怪我ニ而面膚血まみれニ相成畢竟眼中ニ強ク血流レ込候
　　　故其場ニ而丑蔵取押も不相叶武助宅江参り申候と推察仕候 尤寿吉郎小十郎両人へ怪我
　　　いたさせ候前後之儀ハ取押候牛兵衛列ニ承繕候処夜中薮下之事ニ御座候間何分不申候由■ミき
　　　丑蔵儀は寿吉郎知人ニ而は有之候様子ニは候得共兼而書言等仕候儀承り不申候 其日迚同席仕
　　　候之間意趣等可有之様も無御座病乱之躰ニ付右丑兵衛列ゟモ八郎助抱屋敷燐家御掃除
　　　觸次郎兵衛宅江手堅仕置去ル十一日久光八助組合を引渡申候 右八郎助抱屋敷ハ家居等も無
　　　御座そふろふニ付右之通取斗申候 寿吉郎儀は今以武助宅へ怪我療養仕居申候 且又前文
　　　同様孫右衛門儀も前条抱屋敷迄は同道仕候得共相見不申候ニ付無心元右両人療養相濟候迄冨太儀
　　　孫左衛門宅江罷越向合候処不快ニ手少先ニ立大井手際ニ暫ク待合候得共連之面々参り不申氣分も猶又
　　　悪ク右之候ニ付罷帰候由噂有之候間前文之趣演舌仕候処早速冨太同道ニ而押而武助宅江
　　　罷越病人介抱有之候事ニ御座候 且又私共ゟ寿吉郎江怪我之様子追而承申候処是法村藪陰ニ而誰
　　　とも不相分切懸候ニ付始末を付可申ト存候処烈敷目ニ血流レ込眼くらミ其儀出来不申と返答仕候
　　　右書面之次第は寿吉郎一列之内新左衛門・富太・五左衛門并本人ゟ承届申候 右始末之趣早速御達　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　仕筈之処其節之懸合大勢ニ而間合彼是延引ニ相成り申し寿吉郎儀氣分勝レ不申候ニ付私共ゟ此段
　　　御達仕候あいだ可然奉願候 以上
　　　　　　二月　　　　　　　　　　　　魚住左源兵衛
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　加々尾市右衛門
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　高嶋恒吉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　堀　暦次
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　長塩小源太
　　　　　　　　　一宮次左衛門殿
　　　　　　　　　稲津嘉久馬　殿

                                                       （つづく）