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津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

「香木」 細川家 と 伊達家

2010-03-26 17:35:43 | 歴史
森鷗外の「興津弥五右衛門の書」に登場する伽羅木、弥五右衛門は買い入れに反対する相役横田清兵衛を殺害してまで、
この香木を手に入れている。さてこの香木、綿考輯録には、寛永三年の項に次のように紹介されている。
    「去々年、交趾江渡海せしもの帰国、伽羅持参いたし候、三斎君白菊と御名付、其箱の蓋に御自筆御書付
      寛永元年交趾江渡船同三年ニ来伽羅白菊と名之
        たくひありと誰かはいはんすゑにほふ
          秋より後のしら菊の花
     箱長八寸四歩、横七寸六歩、高八寸、板厚サ三歩半、桐之木地ふたハさんふたなり、伽羅木指渡五寸余、
     外ニ三四寸之木懸目三百目余有之、添居申候由なり」

森鷗外の「弥五右衛門」によると、三斎は「初音」と名づけている(古歌略す)寛永三年息忠利がこの香木を天皇に献上、その時
上記の古歌により「白菊」の銘を下賜されたとしている。事実は違うようだ。 (再掲)


   東京の山本様から、伊達家に於ける「香木」に関する資料をメールでご連絡いただいた。
   ご了解をいただき爰にご紹介する。

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伊達氏治家記録 貞山公 巻三十二 

寛永三年九月二十六日
豊前少将忠利朝臣細川越中守ヨリ書状到来御返書進セラル今朝ヨリ御客来御取紛故ニ御挨拶延引セラル伽羅御存分ノ如ク御取ラセノ由方々ヨリ可申参處ニ別テ辱ク思召サル旦又御暇仰出サルノ由珍重ニ思召サル何比御下リ有ルヘキヤ聞セラレタシ御逗留中御會面ヲ以テ仰セラルヘシ伽羅ノ價ノ事今晩遣サルヘシ若シ日暮レハ明朝進セラルヘキ旨著サル

( 此節 公 名香ヲ買求メラレ柴舟ト名ツケラル 世中ノウキヲ身ニツムノ倭歌ニ因リ玉フ 越中守殿ニハ白菊ト名ツケラル禁中ニ於テハ蘭ト名ツケ玉フ他家ニハ初音初雁ナトト名ツケラルト云フ )
※ 上記括弧内は補記であるが 以下 MARSHALL氏の説

寛永三年極月朔日の政宗より嫡男忠宗への書状(「伊達政宗の手紙」佐藤憲一著)

      追って申し候
      其元にて約束申し候 伽羅 遣はし申し候
      かやうのは稀にて候
      心よはくむざと人に遣はしまじく候
      名は柴舟と付け申し候
      兼ね平のうたいに うきを身に積む柴舟の
      たかぬさききよりこがるらん
      たかぬさきより匂ふと云う心にて候
      よびごゑはよくなく候へども
                  恐々謹言
          ・・・中略・・・
       極月朔日    政宗(花押)
        松越前守殿              」

※政宗は「柴舟」という銘を 謡曲「兼平」の「焚かぬ前から匂う」からとったとしている
※政宗の長男秀宗(宇和島藩)にも柴舟を贈り「近頃この様な香は無いだろう」と書状に記す
                                   (正月三日付)
※平成二十一年徳川美術館「大名の数寄」展には香木四種「白菊」「柴船」「蘭」「初音」が
  出品され「白菊」を後水尾天皇勅銘としてある
※一木の伽羅を加賀前田家・伊達家・細川家で分けたという説もある

 なお伊達政宗は寛永十一年七月十五日付 西洞院時慶卿松庵から名香両種贈進の御返書(礼状・和歌を添え)があったと記しており さらに同年八月六日には前日御見廻りとして御出になられた門跡一乗院尊覚法親王と聖護院道晃法親王より名香両種の御返書を賜ると記し 尊覚法親王からの文には「柴舟・太子屋」と香名を表記した礼状であった

 さらに将軍家光公より寛永十二年一月十一日に御数寄屋にて政宗と毛利宰相秀元が御茶を賜った時に伽羅を献上したと思われる このことで十六日に福阿弥を上使として御自筆の御書(礼状)を賜う

      柴舟の香 贈り賜り 珍しく思候
      万事念の被入心さしのとをり祝着事候
        恐々謹言
         正月十六日    家光(御書判)
        せんたい
          中納言殿

※参考 正月十一日
    御数寄屋御飾
     掛軸…圓悟墨蹟  茶入…投頭巾    花入…鶴一声
     釜…信濃     茶碗…織部割高臺  水指…烏帽子箱
     茶杓…二尊院

    御鎖之間
     小壺…珠光文琳  茶碗…シホケ  硯…フホク

コメント
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