衣替えの季節。
毎年この時期になると、冬物と夏物の衣類
を前にため息をついてしまう。
たまさかその気になっていち早く長袖をしま
うものなら、この間のように梅雨寒がやって
きて、またまた衣類ケースをひっくり返して
収拾がつかなくなるからだ。
季節の変わり目は白黒といったようにはっき
りとはいかない。
日本の文化も芸術も文学もそういった土壌に
成り立っていて、それがまた捨てがたいのだ
が、実生活ではそれがなかなか大変なので
ある。
そういえば1980年代末だったか、ちあき
なおみの出るCM、昼下がりの日本間で、
防虫剤を片手にうたうのがあった。
♪半年ごとにタンスにゴン。
春に入れたら秋に買う。
秋に入れたら春に買う。
半年ごとにタンスにゴン。
匂わないのが当たりまえ。
何度も「半年ごとに~」と浮かれてやって
いるうちに、いつしか感情のコントロール
がきかなくなってしゃくりあげ、
ついには泣き崩れるといったシーン。
今思うと、あの頃はバブル全盛期、世の中が
カルチャーセンターだのグルメだのといって
浮かれていた。
そんな世相を背景に、自分だけ取り残された
専業主婦の焦りや孤独を描いていたのではな
いか。
そういえば、大人の女性のフリンを扱ったド
ラマも流行って、主婦層から絶大な支持を得
た。
私はというと、ちょうど仕事にのめり込んで
いた時期で、CMの意図するところを読み
取る余裕もなく、憂鬱な顔ばかりしていた
ような気がする。
そして今、物憂い気分に駆られていることで
はあまり変わりない。
半年とはなんと早いのだろう。
”半年ごとにタンスにゴン”がこの先、何回
続けるのか、また続けられるのか、そのスピ
ードについていけないのである。
それに、引っ越しでずいぶん整理したはずな
のに、また物が溜まりそう。
こんなわが身の愚かさ!!
危ない、危ない、これはよほど意識して生き
ていかないと、物ばかりでなく、心の沈殿物
が山をなすのはあっという間なのだから。