一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

金子みすず 『南京玉』

2011-06-14 14:14:09 | 読書
 

     「大漁」や「わたしと小鳥と鈴と」などは
     教科書にも出てくるし、あまりにも有名な
     ので、別の詩を。

      「つもった雪」
      
      上のゆき
      さむかろな
      つめたい月がさしていて

      下の雪
      重かろな
      何百人ものっていて
     
      中の雪
      さみしかろな
      空も地面(じべた)も
      みえないで      
 

     写真はみすずの遺書の『南京玉』
     昭4年(1929)10月後半から
     翌5年(1930)2月9日まで、
     娘ふさえさんの片言を書き留めた手帳で
     ある。
     
      ブウチャン(ふさえさん)モ象ガ欲シイネ、
      オカアチャン(みすず)ト、ブウチャント、
      象ニノッテユクネ、アシタ

     行間に母の愛がにじみ出ている。
     前回載せたみすずの1人娘の上村ふさえ
     (84)さんは、母の自殺について長い間
      疑問に思っていたらしい。
     どうして一緒に連れていってくれなかったの
     か、と。
     だが、この遺書をみてショックを受け、
     それからは、残りの人生に大きな光となった
     という。

     母娘の愛情はどこにでもあるだろうが、すばら
     しい詩を残した母が、死ぬ間際まで自分
     のことを深く気にかけ、その片鱗を遺稿の形
     で知ったら……
     読んでいるこちらもせつなくなった。