蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

光の犬

2022年07月25日 | 本の感想
光の犬(松家仁之 新潮社)

ハッカ製造で栄えた北海道・枝留の添島家の家族を3代に渡って描く。

ハッカ工場を創設した真蔵の妻よねは助産婦で多くのお産に立ち会う。
息子の真二郎は電気技師で神経質で几帳面。北海道犬の飼育と釣りが趣味。その妻の登代子は、同じ敷地内の隣家に住む真二郎の三姉妹との関係に悩む。
孫の一人:歩は枝留の教会の牧師の息子:工藤と恋仲になるが、宇宙物理学を志して上京する。しかし、若くしてガンに冒される。
もう一人の孫、始は歴史学者になるが、年老いて枝留に帰る。

特段、ドラマチックな展開はなく、登場人物の人生が淡々と語られるだけなのだけど、読み始めると中断するのが難しいくらい先が読みたくなる。
特徴的なのは時系列が無視されていることで、昭和初期から現代までの間をいったりきたりする。普通だったら読みにくくて仕方なさそうなのだけど、これもまた予告編的な?効果があってむしろリーダビリティを高めているように思えた。

添島家とは関係ないが、工藤の友人で、北海道の矯正施設的な農業学校から脱走しようとして遭難する石川のエピソードも印象的だった。

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