蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

朝が来る

2016年04月02日 | 本の感想
朝が来る(辻村深月 文芸春秋)

子供ができなかった主人公夫妻は、特別養子制度により生まれたばかりの子供を養子にして育てている。ある日、子供の実の母親と名乗る人物(ひかり)から電話があり・・・という話。

ミステリかつサスペンスっぽい筋なのですが、あまりそういう要素はなくて、親子とは何なのか、というテーマを真正面から問いかける骨太な物語でした。ありきたりと言ってもいい題材で、かつ、ものすごくシンプルな筋立てなのに、ここまで読ませる力がすごいと思いました。

「親子とは何なのか」というテーマに対して、養子との関係性という面から迫ってくるのかと思って読んでいると、そちらより、むしろひかりとその母親との関係性がメインでした。

このため、冒頭で「主人公夫妻は・・・」と書きましたが、本当の主人公はひかりです。母親との相性の悪さを意識しながらも平凡な暮らしをしていた娘が、外部からの介入者(男)の出現により、関係性が本格的に破たんしていく様子は「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」とも通底するものを感じました。

ただ、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」に比べると、ラストのキレがイマイチだったかな、と。終盤に至るまでの物語力?がハンパなかっただけに、あっけなく終わっちゃったかなあ、という印象でした。

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督促OL奮闘日記

2016年04月02日 | 本の感想
督促OL奮闘日記(榎本まみ 文春文庫)

クレジットカード会社で回収督促のコールセンターに勤める女性が書いた体験記+クレジットカードの使い方の基本?を説いた本。
「督促OL修行日記」を以前から読んでみたいと思っていたのだが、本書がその続編だと気づかずに買ってしまった。

債務者との泥沼の回収体験、みたいな内容を期待していたので、かなり期待はずれだった(もしかしたら、そういう内容は「督促OL修行日記」に書いてあるのかもしれない)。

本書で初めて知ったことは(どこまで本当かわからないけど)、
・クレジット会社は、返済に窮した場合、交渉によっては支払額の減額に応じてくれるらしい。
・訪問して督促する、といったことは現在の法令では難しいので返済をしぶっていると、(私が想像していたよりも)早めに法的回収に入ったりするらしい。
・本来の債務者でない人(債務者の親族とか)であることがわかっていても、その人からの返済に応じるらしい。
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はじまりのうた

2016年04月02日 | 映画の感想
はじまりのうた

主人公が提供した楽曲で商業的成功をおさめた恋人と(その成功ゆえにか)仲たがいする。
知り合いの男に勧められてライブハウスで歌ったのを(かつては大成功したが今は落ちぶれている)プロデューサーが聴き、主人公を売り出そうとする・・・という話。

カタルシスを感じさせるオチの部分は、タイトルロールに重ねた小さな画面で披露される。多分、監督としては「この部分はなくてもいいけど、それだと普通の観客は不満を持ちそうだから、仕方なくくっつけてみました」という所ではないかと想像した。
つまり、劇中の主人公のように「商業的に成功したくて作ったわけではない」と、監督は思っていたのではなかろうか。
現実は、皮肉にも?かなり売れてしまったみたいだけど。

主人公が歌う場面が多くて、多分音楽が理解できる人が見ればそこが素敵なんだと思われるけど、そういう方面にとんと疎い私としては、そういう所はやや退屈だった。
むしろ、「掟破りで何にも縛られない自由人」という感じがよく出ていたプロデューサー役の人がよかった。
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