蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

朝が来る

2016年04月02日 | 本の感想
朝が来る(辻村深月 文芸春秋)

子供ができなかった主人公夫妻は、特別養子制度により生まれたばかりの子供を養子にして育てている。ある日、子供の実の母親と名乗る人物(ひかり)から電話があり・・・という話。

ミステリかつサスペンスっぽい筋なのですが、あまりそういう要素はなくて、親子とは何なのか、というテーマを真正面から問いかける骨太な物語でした。ありきたりと言ってもいい題材で、かつ、ものすごくシンプルな筋立てなのに、ここまで読ませる力がすごいと思いました。

「親子とは何なのか」というテーマに対して、養子との関係性という面から迫ってくるのかと思って読んでいると、そちらより、むしろひかりとその母親との関係性がメインでした。

このため、冒頭で「主人公夫妻は・・・」と書きましたが、本当の主人公はひかりです。母親との相性の悪さを意識しながらも平凡な暮らしをしていた娘が、外部からの介入者(男)の出現により、関係性が本格的に破たんしていく様子は「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」とも通底するものを感じました。

ただ、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」に比べると、ラストのキレがイマイチだったかな、と。終盤に至るまでの物語力?がハンパなかっただけに、あっけなく終わっちゃったかなあ、という印象でした。


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