極北クレイマー(海堂尊 朝日新聞出版社)
著者の作品は「チームバチスタの栄光」と「ジェネラル・ルージュの凱旋」しか読んだことがなかったが、ともに現実の医療現場で起こっていそうな問題をとりあげながらも、ミステリの味付けがあって、筋立てにも工夫があったし、主要登場人物のキャラクターも立っていた。
本作は、実際に起こった福島の産婦人科での事件(裁判では無罪という結果だったので「事件」と呼ぶのは適当でないかもしれない)を材料にしているけれど、ほぼ事実そのままのストーリーになっていて、ミステリ的要素はなく、工夫が感じられず、登場人物も薄っぺらな感じがして、少々失望した。
何かというと、ナントカ委員会が登場して登場人物たちが不毛な議論を繰り広げる、というのも(まあ、医療界の現実がそうなのかもしれないが)、ワンパターンだしなあ。