蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

鉄砲大将仁義

2022年08月21日 | 本の感想
鉄砲大将仁義(井原忠政 双葉文庫)

シリーズ6巻。鉄砲を主武器とする足軽大将となった植田茂兵衛は、4年間の砦番をとかれ、織田側に寝返った穴山梅雪の妻子(武田方の人質)の奪還作戦を命じられる、という話。5巻まではシリーズ各刊でおおよそ完結していたが、本書では、伊賀越につながる本能寺の話が途中で切れている。次の巻も必ず出版される見込みがたつくらいシリーズが人気出てきた、ということだろうか。

本書では合戦部分がないが、茂兵衛が梅雪の妻子の救出する途中での、鉄砲と槍の部隊を使った戦闘場面が面白かった。

本作では、茂兵衛は信忠に気に入られて織田家に高禄でリクルートされる(その場面における(同席していた)信長の描写がいい)。農民だった茂兵衛に徳川家への忠誠心は薄いが、裏切者扱いされる梅雪を見てきた茂兵衛は誘いを断る。あまり本筋と関係なさそうな梅雪の挙動を詳しめに書いて茂兵衛の心理描写につなげているのがうまいなあ、と思えた。
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足軽小頭仁義

2022年08月21日 | 本の感想
足軽小頭仁義(井原忠政 双葉文庫)

シリーズ3巻。徳川家の本多平八郎忠勝のもと足軽小頭に出世した植田茂兵衛、各方面から徳川領に侵攻を始めた信玄軍に対して二俣城に立てこもるが、飲料水が不足して敗れる。信玄の陽動に乗って浜松城を出た家康軍は三方ヶ原で大敗する。浜松城へ戻る途中で茂兵衛は落ちのびる家康たちと出会うが・・・という話。

やはり戦国モノは、合戦場面が面白い。
2巻の姉川の場面もよかったが、本書では三方ヶ原の前哨戦である一言坂の大瀧崩れの陣の場面が特に面白い(三方ヶ原の方は負け戦で茂兵衛の活躍場面が少ない)。
一言坂の戦いは、歴史物語的にはとても有名だが、家康が天下を取らなければ、当然とっくに忘れられた史実だろう。三方ヶ原合戦でさえそうかもしれない。

茂兵衛は槍の達人という設定なのだが、シリーズの背景となっている時期はちょうど兵器としての鉄砲が台頭してくる時期。シリーズのタイトルをみても、この後茂兵衛は鉄砲を主な兵器とする部隊を率いる侍大将になるようで、これまでは槍の効力を説く場面が多かったが、本作以降は鉄砲が武器の主役となっていくようだ。
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