蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

木曜殺人クラブ

2022年08月15日 | 本の感想
木曜殺人クラブ(リチャード・オスマン ハヤカワ・ミステリ)

富裕な人達が集まる老人ホーム;クーパーズ・チェイス。かつて腕利きスパイ?だったエリザベスは元警部のペニーが持ち出した未解決事件ファイルから真相を推理する集まりを主宰していた。他のメンバーはかつての労働運動のリーダー:ロン、元の精神科医のイブラヒム、元看護師のジョイス。
クーパーズ・チェイスの共同経営者のトニーが殺害され、エリザベスたちはリアルな事件の調査を始めるが、もう一人の経営者のイアンも殺害される・・・という話。

私がうっかりして読めていないのかもしれないが、ミステリとしての伏線とか手がかりが乏しいように思えた。しかし、ミステリ的要素をなしにしても、とても楽しく読めた。

知的で元気で金持ちなエリザベスたちは、(日本の小説や現実によくあるような)子どもたちを始めとする親族たちについて思い悩んだりはしない。おいしい食事とお茶を楽しみ、法的に際どいところにも踏み込んだりする。
しかし、そんなクラブのメンバーたちも、配偶者や周囲の人々の衰えを見て感じるにつけ、自分たちにも死の影がすぐ傍まで迫っていることを意識せざるを得ない。
そんな、老人たちの光と闇が、しゃれたセリフとともに描かれて全体がおしゃれなムードに包まれているように感じた。

老人ではないが、チェスが名人級でとても器用で何でも作れてしまう建設業者:ボグダン・ヤンコフスキも魅力的だった。

ハヤカワ・ミステリは小口が黄色なので、電車の中で読んでいる人がいるとすぐわかる。今はめったに見かけない(というか紙の本を読んでいる人が珍しい)が、たまにいると、それだけでとてもカッコいい人に見える。久しぶりに電車の中で読んだハヤカワ・ミステリが本書で、それがしゃれた内容だったので、妙に気分がよくなった。
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