蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

おじさんはどう生きるか

2022年08月07日 | 本の感想
おじさんはどう生きるか(松任谷正隆 中央公論社)

冒頭に、(著者が)70歳になろうとしているのでタイトルは「おじさん」ではなく「おじいさん」であるべきなのでは?とある。松任谷正隆といえば、おしゃれでモテて音楽センスもあって・・・というイメージしかないので、その人が70歳というのは、けっこうインパクトがあった。

このサイトで昔、著者が連載しているJAFメイトのエッセイを絶賛?したことがあった。おしゃれなイメージの著者の赤裸々な?失敗談にギャップがあって面白い、といったことを書いたのだが、本書でもその手の話が多い。本書の中で明かしているのだが、どうもそういう露悪的なネタを取り上げるのが本当に好みみたいだ。

本作を読むと、著者が相当に神経質で潔癖症なのがわかる。例えば、コロナで家事分担をして炊事を担当してから台所は水垢一つないように磨き上げないと気がすまない、とか。
そういった性癖がもとで奥さん(ユーミン)と喧嘩になることも多いそう。
そうでなくてもプレイボーイのイメージが強かった著者と売れっ子で超多忙そうなユーミンが40年も夫婦でいて、著者のエッセイを読む限り今でも仲睦まじそうななのは(失礼ながら)とても意外だ。

私の若い頃(バブル前後)、”大人のモテ男”というと松任谷さんと伊集院静さんという感じだったので、その二人ともが実は無類の愛妻家だった、という結果を見ると、マスコミとかが作る虚像(とそれに踊らされている私のような大衆)が、いかにいい加減なものかがわかる。
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作家との遭遇

2022年08月07日 | 本の感想
作家との遭遇(沢木耕太郎 新潮文庫)

著名な作家の作品の評論集。
沢木さんの本業?ではないのだが、評論を書く時は、その作家のほぼすべての作品を読むというのだから、仕事に対する真摯さが並ではない。
それでいて、変にペダンティックにならずに自らの体験なども交えて、面白く読ませよういうサービス精神にも満ちていて、どれも楽しく読める。

評論として視点の鋭さや洞察の深さがすごいな、と思えたのが
「青春の救済」(山本周五郎)、「事実と挙行の逆説」(吉村昭)、「乱調と諧調と」(瀬戸内寂聴)
自らの体験を交えて面白かったのが
「必死の詐欺師」(井上ひさし)、「一点を求めるために」(山口瞳)、「運命の受容と反抗」(柴田錬三郎)

上記のように、ほとんどが超有名な作家ばかりなのだが、近藤紘一と高峰秀子は(そういう意味では異彩を放っている。たまたま私が好きで(著作も少ないこともあって)作品のほどんどを読んだ経験がある人たちだったので、ちょっと嬉しく感じた。
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