蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

海をあげる

2022年03月03日 | 本の感想
海をあげる(上間陽子 筑摩書房)

著者は、沖縄の大学の教育学の教授。DVやネグレクト等による問題を抱えた若い女性たちの動向調査や支援を行っている。
そうした調査等に基づく学術的な著作もあるようだが、本作は著者自身の家族なども含めた身近な話題を中心にまとめたエッセイ。

冒頭の「美味しいごはん」が「えっ、そんなことまで言っちゃう?」みたいな内容。
前夫は浮気していて離婚することになったのだが、浮気の相手は著者自身の長年の友人で、浮気中も(気づかずに)普通に友達づきあいをしていた・・・そうである。

そういう下世話なところに興味を抱いてしまうのがゲスなところだなあ、と自分で思う。
大半が出版社のHPに連載されたものを収録した中で、この「美味しいごはん」は書き下ろしで、しかも冒頭にもってくるというのは、やっぱり読者の興味をひこうとしているのでは?などと考えてしまうのも、やっぱりゲスっぽいか。

表題作も書き下ろしで、辺野古に代表される沖縄の課題解決が進展しないことへの絶望感?から、問題を丸投げしたくなる気分を表している。
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ツチハンミョウのギャンブル

2022年03月03日 | 本の感想
ツチハンミョウのギャンブル(福岡伸一 文春文庫)

週刊文春に連載されたコラム等を集めたエッセイ。

表題は、数千匹の幼虫のうち数匹しか生き残れないと思われる奇妙な成育?方法をとる虫の生態を描いたもの。

「生物と無生物のあいだ」で有名になったように、科学的な知見や科学者のエピソードをやさしく紹介・解説したエッセイが著者の本領だと思う。その一環でもあるが、もともと昆虫オタクらしく、昆虫に関する内容もまた興味深いものが多い。
本書でも表題作を始めとする昆虫モノと、冒頭の円周率の暗記法?を巡る話を始めとする科学モノはとてもおもしろい。
しかし、専門外?であるフェルメールとかグルメ話はイマイチだった。

文春文庫のコラムシリーズ?は本作を含めて5作あるのだが、古い方から3つ目くらいまではほとんどが科学モノ、昆虫モノだったのでどれも粒揃いの面白さ(特に「ルリボシカミキリの青」が良かった)だったが、後半2作は、それ以外の話題が多くなってちょっと残念。
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