蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

罪の声(映画)

2021年09月10日 | 映画の感想
罪の声(映画)

グリコ森永事件をモデルにして、同事件の真相をフィクションで探った小説の映画化。
原作の方は、グリコ森永事件をなぞって、この事件の謎解きをした部分が長い。本来のテーマである、事件の関係者たちの子供に及んだ悲劇については、後から付け足したような感じがしてイマイチだったかなあ、と思えた。

映画では、上記のテーマがちゃんと主題になっていて、その部分のヒロインである事件の中心人物の娘(生島望=原菜乃華)役がよかったし、終盤はかなり盛り上がりが感じられた。同じような立場にありながら、幸福で平凡な人生を送ることができた曽根(主犯格のおい=星野源)とのコントラストもうまく描かれていたと思う。
総じて、原作よりも出来がよく、予想を裏切って?楽しくみられた。
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海苔と卵と朝めし

2021年09月10日 | 本の感想
海苔と卵と朝めし(向田邦子 河出書房新社)

向田邦子さんと聞くと、私は杉浦直樹さんの顔が思い浮かぶ。
傑作揃いと言われる向田さんのエッセイの中でも父親の登場する思い出話が一番精彩を放っていて面白い。テレビドラマで向田さんの父親役などで出演していた杉浦さんが、この父親の(エッセイから想像される)イメージにあまりにも当てはまっていて、エッセイの中で父親が登場するたび、杉浦さんの顔が脳内に現れてしまう。

本書の冒頭にも採用されている、鹿児島時代の思い出の中に現れる父親、カルメ焼きに失敗した時の父親、時間を経て何度も読んでいるので、向田さんの父の記憶が自分の経験であるかのように再現されるのが面白く感じられる。

今風にいうと、ちょっと上から目線的なところもあるのだけれど、何回も繰り返して読んでも、執筆から数十年を経ていても古びることなく楽しめた。没後30年を経てもエッセイ集が編まれ、評判を呼ぶのだから、そう感じる人が多いのだろう。
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