蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

羊の木(映画)

2020年02月01日 | 映画の感想
羊の木(映画)

人口減に悩む魚深市は、元受刑者(殺人犯)6人の定住を極秘のうちに受け入れる。6人はそれぞれ職業を得て働き始めるが、次第に周囲の人々との不協和音が目立つようになり・・・という話。

「桐島、部活やめるってよ」をはじめとして吉田監督の作品は好きなものが多かったのですが、近作の「美しい星」と本作は少々期待外れでした。

ややホラーで、少しだけサスペンスがあるけど、ミステリでは全くなくて、社会的なテーマ(受刑者の受入れとか?)を追求するわけでもなく、不条理劇とも言いかねるし、なんか中途半端な感じでした。原作を知っていればそうでもないのでしょうか?

元受刑者で、他の元受刑者を誘って悪だくみをしようとしていて、いつもニヤニヤしている北村一輝さんが、もともとそういうキャラの役者とはいえ、もう役柄の人そのものにしか見えなくて見事でした。(朝ドラ(スカーレット)に出てたけど、(失礼ながら)朝ドラにはホントに似合ってなかったなあ)
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マスカレード・ホテル(映画)

2020年02月01日 | 映画の感想
マスカレード・ホテル(映画)

都内で起きた3件の連続殺人は同一犯のものと思われた。
犯人が残したメッセージから都内の高級ホテルで次の殺人が起きると警察は推測し、刑事たちがそのホテルの従業員に成りすまさせて警戒することになったが・・・という話。

舞台となるホテルが超高級という設定で、客のわがまま(ルームチェンジとか)を何でも受け入れるというポリシーなのだが、そんなホテル本当に日本にあるのかなあ。

犯人の本当の目的からすると、変な小細工をするよりも黙ってホテルに宿泊してこっそり犯行に及んだ方がよっぽどよかったのでは?と思えた。

ミステリというより、「ホテルであったいい話」集という感じの内容だった。
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等伯

2020年02月01日 | 本の感想
等伯(安部龍太郎 新潮文庫)

安土桃山~江戸初期に活躍した長谷川等伯の生涯を描く。
ちょっと前に狩野永徳を描いた「花鳥の夢」を読んだ。その中で永徳のライバルである等伯も登場する。「花鳥の夢」の主人公は永徳なのに、絵師(というか芸術家)としての才能は等伯の方が上だった・・・的な描写がされていた。
永徳は狩野派という大型工芸集団のトップリーダーで、多数の絵師たちを管理して(信長や秀吉のような絶対君主が注文主である)納期の超厳しいプロジェクトを仕上げなければならないという、経営者としての側面が強かったようだ。
一方、等伯は晩年まで一絵師的な立場で活動していたので、永徳のようなシバリはなく、この点が二人の作品の差になっているみたいだ。

本作のクライマックスは、松林図を秀吉との勝負(秀吉の逆鱗に触れた等伯が、秀吉を感心させるような絵を描けば許される)の成果とするシーンで、物語としては確かに盛り上がったのだが、いくら何でも創作しすぎなのでは?とも思ってしまった。

本作を読んで意外に感じたのは(主題とは全く関係ないが)旧主というものに(精神的に)束縛される武士階級の姿だった。
等伯は絵師の長谷川家の養子となって武士ではなくなったのだが、その兄は旧主の畠山家の再興のために文字通り命をかけており、人生のすべてをなげうった。等伯は子の兄の活動のためにさんざんな目にあったのだけれど、最後まで兄に協力しようとする。
著者は、もう一つの例として石田三成ら豊臣政権の文治派官僚をあげる。
彼らの多くが近江の浅井家の系譜につながる者たちであり、彼らは旧主の末裔である淀君を中心に結束したのだとしている。
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