蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ペンギン・ハイウェイ

2020年02月08日 | 本の感想
ペンギン・ハイウェイ(森見登美彦 角川文庫)

主人公(アオヤマ)は、小学校4年生とは思えないほどませていて、いろいろな研究をしている。
彼の研究の一つは、近くのカフェで働くお姉さんの生態。彼女は缶コーラなどからペンギンや謎の生物を生み出す能力を持っていて、森の奥に浮かぶ水玉?状の「海」と密接な関係があるらしい。主人公は友人のウチダやハマモトと「海」の研究も進めるが・・・という話。

小説家と読者には相性というものがあって、例えば伊坂幸太郎さんの作品は(彼が代表的ベストセラー作家であっても)相当に好き嫌いが分かれるのではないかと思う。私は大好きなんだけど。
森見さんも、やはりベストセラー作家ですが、どうも私にはその作品が面白いとは思えないんですね。
ともにストーリーには無理があって、有体にいうと荒唐無稽です。しかし伊坂作品は、その小説世界の中ではそれなりに辻褄合わせ(それがまた「こんなんでいいのか?」みたいなものが多いけど)があって、なんというか、完結性みたいなものが感じられることが多いのだけど、森見さんの場合、世界が開放されすぎていて収束していかないようなイメージがあるんですよね。

本書でも、お姉さんのナゾは説明されることなく、アオヤマくんの研究成果は読者それぞれの想像に委ねられます。なので、ストーリー自体はやっぱり私の好みではなかったのですが、アオヤマくんの真摯な?研究生活や、老いた学究みたいな言葉遣いはとても楽しめました。
ファンタジー的な要素をなくして、アオヤマくんとお姉さんの純粋な?恋物語?だったら(私には)面白かったかも。
コメント
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