蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

木洩れ日に泳ぐ魚

2018年06月24日 | 本の感想
木洩れ日に泳ぐ魚(恩田陸 中央公論新社)

千浩と千明は双子の兄妹である。幼い頃、千明が養子に出されて別々の親に育てられたが、大学時代に偶然再会し、いっしょに暮していた。
しかし、あることをきっかけに別居することになる。
引っ越し準備が終わった部屋で二人は最後の食事(というか酒盛り)をする。以前二人で行った山岳ハイキングの途中でガイドが崖から落ちて死んでしまったことを話題にするが、二人はお互いをこの事件の犯人ではないかと疑っていた・・・という話。
2007年に発行された本で、文庫化されたのは2010年らしいのですが、最近になって本屋で平積みされているのをよく見るようになりました。かなり売れているようです。

兄妹二人の掛け合いで進むのですが、ストーリーを展開させていくのは千明(妹)が過去の出来事を推理していくパート。
しかし、この推理には根拠に相当な難があり(というか単なる思いつき)、その結論は、なかなかうなずけない内容でした。
著者としても、こうした推理が真実である、などというつもりはなくて、相当部分を読者の想像に委ねています。


うーん、正直言って「これのどこがいいの?」というのが感想で、ミステリとしても心理小説としてもイマイチじゃないかなあ。
「六番目の小夜子」「夜のピクニック」など世評の非常に高い作品を読んだ時も似たような感想を抱いてしまったので、相性がよくないんだろうなあ。

とてもいい人に見えた千浩と千明の化けの皮がはがされていくプロセスは意外感がある展開で、ここに魅力を感じる人が多いのだろうか?
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ウニはすごい バッタもすごい 

2018年06月24日 | 本の感想
ウニはすごい バッタもすごい (本川達雄 中公新書)

サンゴ、昆虫、ウニ、ヒトデ、ホヤ、ナマコなどの生物の精妙ともいえるカラダの仕組みと生活環境との関係を開設した本。

タイトルからして「ざんねんな動物・・・」系の内容が想像されるのだが、内容はバリバリの硬派で学術的なものであった。
例えば、昆虫が全身に酸素を運ぶ仕組み(ヒトの場合は血管)として気管系を発達させたのだが、その末端の毛細気管の太さは0.2ミクロンであり、それは酸素分子の平均自由行程の2倍となっていて、酸素は通すが体内から水分が逃げくい直径になっているという。
気が遠くなるほどの長い年月をかけた進化によって最適化されているのだろうと思うが、それにしても「できすぎだろう」というくらいよくできているよなあ。

その他にも、ウニの棘をコントロールする筋肉や貝の開け閉めを司る筋肉の仕組みなどにも感心させられた。

著者の研究の主テーマはナマコなのだが、ナマコはエネルギーが必要な筋肉の量が非常に少なくて少量の栄養で生きていける。主な食糧は砂(の粒の間にある有機物)で無限にあり、筋肉が少なくて(捕食者が)食べても栄養が少ないうえ毒も持っているので捕食される心配もない。食う心配がなく、食われる心配もない、ナマコの生活こそ天国そのものではないか・・・と著者はいう。

ハードな内容だなあ、と思ったら、あとがきによると本書のネタ元は東工大の講義録だとか。
そんななか、著者自身が作ったサンゴや虫などを讃える?歌が章末、巻末で披露されているのが、また強い違和感(やっぱ、ナマコを研究している先生って変わり者なんだろうなあ・・・という)を生じさせているのであった。もしかして東工大の講義では著者自身がこの歌を歌っていたりするのだろうか。
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