蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

万引き家族

2018年06月14日 | 映画の感想
万引き家族

東京の住宅街に、廃屋じみた古い平屋の一軒家が残っている。
その家の持ち主である柴田初枝(樹木希林)と治(リリーフランキー)・信代(安藤サクラ)の夫婦、その息子:祥太(城桧吏)、信代の縁戚の亜紀(松岡茉優)が暮らしている。
治・信代の稼ぎと初枝の年金では暮らしていけず、足りない分は家族総出?で万引きしている。
ある日、治が集合住宅のベランダにいつも放置されている少女を不憫に思って連れ帰るが・・・という話。

上記のようなあらすじ・タイトルの外国映画だったら、この家族は(少なくとも前半は)もっと悪人っぽく描かれると思う。
治はカゲでは初枝のことを「ババア」呼ばわりするのだけど、その口ぶりには愛情があふれてしまっている。
JKビジネスのベテラン?である亜紀は、もっとずるがしこくしたたかに描かれてもよさそうなものだが、可憐で真面目な学生に見える。
子供のころ虐待されてきた信代は、心的外傷を感じさせない聖母のような感じだ。
三人とも、もっと悪人らしく上記と反対の役柄を演じろ、と言われれば簡単にできそうなので、ある意味甘やかさを感じさせる展開は、監督の方針なのだと思う。

唯一、「ホントはこの人は悪人かも」と思わせるのが初枝で、表向きはやさしいお婆さんそのものなんだけど、時々ヒンヤリとした底意地の悪さをチラ見させるのが、なんとも上手だなあ、と思えた。

続編が作られることはないのだろうけど、続編があるとしか思えないような終わり方だった。
ラストシーンを見て誰もが思うのは(偶然とはいえ、ちょうど似たような事件があったばかりでもあり)「皆はしあわせになったみたいだけど、この子はどうしてくれるの?」じゃないかな。



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