蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

バリー・シール アメリカをはめた男

2018年06月09日 | 映画の感想
バリー・シール アメリカをはめた男

アメリカの大手航空会社のパイロットだったバリー・シール(トム・クルーズ)は、単調な業務に飽きてしまい、CIAのエージェントの誘いを受けて、小型のレシプロ機による、ニカラグアなどの反政府組織への武器運送に携わる。そのうち帰り道にメデジンカルテルの頭領のエスコバルから麻薬の密輸を請け負うようになる。
バリーは仲間を募って機数を増やし、ものすごい大金を手にするが、麻薬取締官やFBIに目をつけられ逮捕されてしまう・・・という事実に基づく話。

バリーらは取締から逃れるために、無管制の超低空で飛行するのだが、1970年代終りから80年代前半の話なので、もちろんGPSとかなくて紙の地図だけが頼り。これでアメリカとコロンビア、ニカラグアを何十回も(無事故で?)往復できたというのは凄い腕前だなあ、と思えた。(実際、それがどれくらい難しいのか、よくわかっていないのだけど、エスコバルが愛用?したのだから、きっと飛び抜けていたのだろう)

稼いだカネ(裏金なのですべてキャッシュ)の量が多すぎてバリーが住む田舎の町は銀行の支店でいっぱい。バリー専用の金庫室を設けた銀行もあったが、それでも足りず、庭に埋めたり、倉庫に詰め込んだりする。家の押し入れ?みたいな所をなにげに開けたら札束が雪崩のように落ちてくるシーンが面白かった。(これが、本当にあったこと(らしい)だからこそ面白い。フィクションだったら「ありえね~」とか感じたくらいで終りだったと思う)

あと、バリーが逮捕された後、バリーが住むアーカンソー州の知事が州の司法長官に圧力をかけて釈放させてしまうシーンがあるのだが、その知事がビル・クリントンだった、というのも笑えた。

まあ、「事実に基づく」とは言っているものの、相当に誇張している部分があるんだろうけど、本作を見る限り、どうもアメリカ(というかCIA?)の陰謀ってウラを知ってしまうと、そこが浅いっていうか、けっこういい加減なんだなあ。
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かまさん

2018年06月09日 | 本の感想
かまさん(門井 慶喜 祥伝社)

鳥羽伏見あたりから函館での降伏までの榎本武揚の活躍を描く。タイトルは武揚の名前が釜次郎であることから来ている。

「活躍」と書いたけれど、本書を読む限り、武揚の打ち手はことごとく裏目に出ている。
幕府海軍の残存艦群を台風シーズンに函館に向けて出発させて一部の艦を失い、
主力艦の開陽を軍事上の必要性が薄い江差沖に派遣して座礁・沈没させ、
政権幹部を人気投票で選んだ結果、経験豊富な指揮官を失い、
どう見ても無茶な宮古島海戦をしかけて惨敗し、戦線縮小の時期を読み間違えて政府軍を函館近郊まで引き入れ・・・
また、武揚は、登場する多くのシーンで飲酒している。

著者は、武揚に大きな好意を持ってその生涯を描いているようには思えるものの、作品上の武揚は、どうも、あまり立派な人だったとは思えんなあ。。。

本書で描かれる政府軍は自分たちが寄せ集めで士気や経験が乏しいことをよく知っていて十分な戦力や物資が整わない限り積極的に戦おうとしない。
それは作戦技術上、正しいことだろうし、この後の(西南戦争などの)内戦においても顕著にみられる傾向だ。しかし、この政府軍の系譜を継いだ日本陸軍は、勝ちを重ねるうちにそうした特質とは正反対の方針をもってしまうことになる。
歴史の皮肉だなあ、といつも思う。
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