蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

その女アレックス

2015年12月11日 | 本の感想
その女アレックス(ビエール・ルメートル 文春文庫)

看護師のアレックスは自宅近くの道路で男に誘拐され廃屋に監禁される。狭い檻に閉じとめられ何日も放置されて死も間近かと思われたが何とか脱出する。すぐにも助けを求めるかと思われた彼女は姿を消し、誘拐事件を捜査する刑事カミーユは彼女を追う・・・という話。

ミステリというよりサスペンス小説だが、若干くどめの描写に慣れれば、二転三転(いや四転くらいしたかな?)する大仕掛けのストーリー展開に気持ちよく翻弄されることができるし、誰が被害者で誰が加害者なのかすら判然としない筋書のアイディアはとても斬新で、昨年の各種ランキング上位を独占したのも、もっともと思われる。

さらに本書を魅力的にしているのは、アレックスの行方を追うカミーユをリーダーとする刑事グループのキャラだろう。
カミーユは身長140センチ台で子供のような背丈なのに刑事としてのプライドの塊のような人物で、妻は事件で殺され両親もすでに亡く天涯孤独。今は飼い猫だけが唯一の慰めである。
ルイは富豪刑事。高価な衣服を小粋に着こなすが、刑事としての技量も一流。
アルマンは極度の吝嗇だが、仕事への熱心さはピカイチ。
暴走しかけるカミーユをルイとアルマンが上手にコントロールしてチームワークはバツグン。
事件解決後に明かされる彼らチームの小さなエピソードが、やや陰惨な印象の物語にわずかな救いをもたらしている。
コメント
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