きょうの大相撲大阪春場所の千秋楽。
2場所連続で横綱同士の相星決戦となったけれども…
過去、横綱同士の2場所連続千秋楽相星決戦は、3度あった。
輪島と北の湖、貴乃花と曙、もうひとつは…忘れてしまった。
しかしその結果、前の場所で敗れた横綱が、すべて翌場所では勝っている。
つまり、交互に優勝をしているわけである。
言い方を変えると、両横綱ともに顔が立つようになっている。
大相撲というのは、なんとなく、筋書きがあるような気がする。
といっても、それが八百長だという短絡的な話ではない。
その辺がちょっと微妙な「筋書き」の説明の難しいところだ。
僕は取り組み前から妻に「今日は間違いなしに朝青龍が勝つで」と言った。
いつも言うが朝青龍は大嫌いなので、負けて欲しいけれど、そうはなるまい。
理由は、そんな微妙な「筋書き」が目に映ってくるからである。
大相撲は、「筋書きのあるドラマ」と言ってもいい。
案の定、白鵬はずさんな取り口で朝青龍に負けた。八百長ではないだろうけど、ここは朝青龍が勝つという筋書きであったから、こういう展開は不思議でもなんでもない。相撲協会も早く朝青龍に優勝をさせて、去年の不祥事をうやむやにしてしまおうと躍起になっていたに違いない。白鵬が4連覇をするよりも、協会はそちらを望んでいた。
朝青龍は立会いが悪かった。が、白鵬は上手も取らず、がむしゃらに出て行った。
なんで、あんなにあわてて攻める必要があったのか。
いつもの白鵬の相撲に比べると、別人のようで、あまりにも悪すぎた。
優勝した朝青龍は、表彰式の土俵下インタビューで、
「大阪がほんまに好きや。まいど、おおきに」
と満面に笑顔を浮かべて手を振っていたが、これもなんだかドラマっぽい。
しかしまあ、これで、横綱同士の2場所連続千秋楽相星決戦は、前場所の敗者が今度は勝者になるという「筋書き」は保たれたのである。
重ねて言うが「八百長」とはまた違う。白鵬も勝ちたかったに違いない。
これは、なんとなく「そうなる」という大相撲の独特の流れ(筋書き)なのだ。
たとえば今日、7勝7敗で、勝てば勝ち越して殊勲賞が約束されていた琴奨菊は、すでに8勝をあげて勝ち越している稀勢里と対戦した。どうみても、ここは琴奨菊が勝つはずである。実際、琴奨菊が勝って勝ち越しを決め、殊勲賞を獲得した。稀勢里が勝つよりも、琴奨菊の勝利のほうが好ましい筋書きなのである。先日、横綱朝青龍を破った琴奨菊に、協会は殊勲賞を与えて盛り上げたいところなのである。
で、やはりこういう好ましい結果は、ほぼ100パーセントの確率で実現する。
同じく7勝7敗で迎えた大関琴光喜は、これも8勝をあげて勝ち越していた大関千代大海との対戦であった。万が一にも千代大海が勝つことはないだろう、と見ていたら、やはり千代大海はあっさり負けた。これで琴光喜は無事に勝ち越した。魁皇は、黒海にはたきこみを食って敗れたが、もし魁皇が7勝7敗であれば、黒海もこんな戦法には出なかっただろう。しかし、魁皇はすでに勝ち越していたのだから、黒海も思い切った手を使えたのだ。結局、黒海は勝って13勝をあげ、敢闘賞を受賞した。みんな、暗黙のうちに、好ましい結果に向けて流れていくのである。
ところで、今の大関は本当に情けない。
魁皇、千代大海、琴光喜と3人の日本人大関が揃って8勝7敗で春場所を終えた。
休場した琴欧州を除く3大関すべてが8勝7敗というのは、なかなか、やろうと思ってもできないことだ。それが、終わってみたら、みんな8勝7敗。
これで本人たちは、めでたし、めでたしなのであろう。
まあ、これでは、モンゴル勢には勝てんわなぁ~。
大相撲には「クンロク大関」という言葉がある。
9勝6敗という、大関としてふがいない成績を繰り返す力士に、侮蔑をこめて呼ばれたものである。今の大関は、その9勝すらあげられないのだから、「クンロク」にも劣る存在である。
2場所連続相星決戦を演じたモンゴル人の2横綱と、全員が8勝7敗というギリギリの勝ち越しを果たして安堵する日本人の3大関。このとてつもなく大きな差が、今の大相撲の全てを物語っている。横綱貴乃花が活躍していた頃の大相撲がなつかしいなぁ…。
と、書いているうちに日付が変わってしまった。
おやすみなさい。