いよいよこの夏、東京都の葛西臨海公園で海水浴場が
オープンします。
東京湾は、高度成長期で酷く汚染され、多くの海水浴場が
長い間閉鎖されています。
そんな中、人工的に作られた砂浜とは言え、この公園の海は
海水浴場として相応しい水質基準を満たしたと言います。
ここ数年、試験的では有りますが、夏場には、短期間
都民に解放された事は有りますが、顔を着けないと言った
条件の元での海水浴でした。
ここの海は、遠浅で、小さな子供達でも安心な様に作られ
これまで海水浴に縁が無かった都民にとって、身近に作られた
海辺の憩いの場になりそうです。
しかしながら、本当に手放しで喜んでいいのでしょうか。
そもそも、顔を着ける着けないの基準は何なんでしょう。
顔を着けることが出来ると言うのは、目、鼻、口から
病原菌や細菌が入っても害のない量だという事です。
良く調べてみれば、この海水浴場の周囲には大きな川が有ります。
東京都を代表するような河川ですが、ここを流れ下る水が
実は、汚染水を流している事実が有るのです。
都内の各地にある汚水処理場で浄化されるから綺麗だと言う
専門家もいますが、完全に処理されるのではなく、生活汚水の
窒素、リンを含む多くの有機物が流れていて、更には、処理場を
経由しないで、直接住宅街や工場から流れ出る汚水も多く、
その流れはいつも暗く澱んでいます。
葛西臨海公園は、ちょうど、二つの河川に囲まれた、
砂州の様な状態で作られていて、多くの都民やボランティア
学者の力で、人為的に浄化して現状に至っているのです。
彼らによって、ここまで浄化できたことは、本当に素晴らしいの
一言に尽きますが、問題は、川や東京湾の汚染状態は
全く変わっていないという事です。
更には、お台場や、城南島に同じような計画が有るそうですが、
一見、東京湾が綺麗になったように思えて、喜ばしい事と
思いがちですが、その実態は、見た目のパフォーマンスと
商魂が渦巻いているのです。
葛西臨海公園の海は、東京オリンピックのトライアスロンの
会場となる予定です。顔も着けられない所で、世界の
選手を泳がせるわけにはいかないのです。
国内外に、東京湾が安全で美しい海であることを
何とかアピールしたい、お金大好きな人達が絡んでいるのです。
高度成長の頃から、目先の欲望に目がくらみ、多くの自然を痛めつけ
今に続く環境汚染を生んだ、世界に恥たる行いを全く省みず
また、目先で世界や多くの人々をごまかそうとする、本当に
短絡的な政策です。
今や、日本中の自然が破壊され、人々と自然の関わり合いが
寸断されています。
ただ刹那な欲求に目を向ける日本人が、日本の大自然を
慈しみ崇める事は有りません。
経済が不況と成り、誰もが生きて行く、食べて行く事に躍起になり
太古の昔から日本人の心を育てて来た、自然や生き物、更には
人々の思いやりの気持ちも無くなってきました。
子供のみならず、大人の社会も、ヒステリックになり、
自分の事しか考えられないイジメの体質が目に付きます。
私達日本人は、数千年にも渡って、大自然の懐に抱かれ
大自然から得られた命の糧で生きて来ました。
その為、私達の心には、いつも美しい自然が有ったのです。
海で泳ぐことも、山に登ることも、そんな大自然に触れたいと言う
心の願望でもあるのです。
海水中の大腸菌の数、透明度、顔を着ける着けないと言った
全く私達が泳ぐための基準とは異なった、情けない次元で
海水浴をすると言うのは、本当に茶番としか言いようが有りません。
本質を見失った日本社会は、何時まで経っても人々を
幸せには出来ないのです。