羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

『野口体操入門』にちなんで……漢字の本

2015年06月26日 09時05分56秒 | Weblog
 第一章「身体感覚を甦らせよう」ーエピローグーで触れている、1970年代半ば。
 はじめて私が野口三千三の体操教室に足を踏み入れた当初、有吉佐和子の『恍惚の人』がベストセラーになっていた。
 森繁久彌主演で映画化されと当時、社会に与えた衝撃は大きかった。「認知症」が問題となっている現在、作家というものは先取りの感性に優れた特性を持った人こそが大成できる、と今となっては彼女のすごさに驚きを禁じ得ない。

 さて、野口先生は長編小説『恍惚の人』をもじって「自分は甲骨病です」と高らかに宣言し、体操の教室でありながら漢字の教室のようなレッスンを展開されていた。最初は戸惑ったものの、すぐさま慣れてしまった。
 板書は漢字の語源、大和言葉の字源がかかれ、レッスンの初めから1時間、長いときにはさらに30分ほどが、ことばの時間にあてられていたこともある。ほとんど動かないで話に聞き入るわけだ。動きについていけない迷い込んだ猫状態のわたしにとっては悪くなかったのね。

 当時、主に紹介されたのが白川静の本だった。
 まだまだ日本、いや世界でこの碩学の長老の存在を知る人は、ごく僅かでしかなった。私とて、野口体操教室に通わなければ、一生、白川文字学とはまったく縁がなかった。

 久しぶりに書棚から本を手元に集めてきた。
 初版が出版された順に紹介しておきたい。

 1971(昭和46)年4月10日 『金文の世界』  平凡社東洋文庫 184
 1972(昭和47)年2月29日 『甲骨文の世界』 平凡社東洋文庫 204
 1976(昭和51)年1月16日 『漢字の世界1』 平凡社東洋文庫 281
 1976(昭和51)年3月26日 『漢字の世界2』 平凡社東洋文庫 286

 1977(昭和52)年1月10日 『古代漢字彙編』 木耳社 小林博著 白川静序

 これらの5冊が、甲骨文・金文といった中国古代文字を学ぶためのよすがとなった。
 因みに、『字統』や『字訓』さらに『字通』が出版されるのは後のこと。一般的な評価は皆無の時代だった。

 今朝、一冊ずつ本を開いて、改めてすこしだけ読み返してみると、とても新鮮。
「頁はめくったものの、殆ど理解していなかったー」
 今となっては手に入りにくい本が残ったことだけでもよしとしよう!(影の声)

 学校では習わなかった“ことばの海”に漕ぎだす船に途中乗船させてもらったのだ、と往時を手繰り寄せて懐かしい思いに駆られている。勉強のやり直しは、今からでも遅くはない、と言い聞かせている。(影の声)
「なんで体操に古代文字なの?」
 そんな疑問もなかったわけではない。
「まッ、いいか。面白そうだから」
 というわけで、体操にも文字にも興味津々の26歳のわたしであった。
 若さとはなんと無謀!(影の声)
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