羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

朝の体操ー5-

2009年03月26日 11時26分09秒 | Weblog
 春秋社版『野口体操 おもさに貞く』151ページに載っている一枚の写真。
 真ん中で‘ヨガの逆立ち’をなさっているのが野口先生で、このまっすぐな在り方は見事だ。
 当時、六十四歳を目前にした頃だった。

 今朝は、この写真を見ながら、ヨガの逆立ちを練習した。
 いちばん手前にいるのが当時二十九歳の私で、教室に通いはじめてほぼ3年目だ。
 よく見ると背中に両手を当てて、崩れないように支えている。
 昨年出版した『マッサージから始める野口体操』の写真と比べてみると、背中の線がまったく違っている。
 三十年は無駄ではなかった。
『年をとればとるほど柔らかくなる』を実証する写真でもある。

 この写真は、正確な月日は失念したが、本の出版のために急遽撮影することになったので、10月末、遅くも11月の初旬。
 当日は、小雨の降る寒い日で、午後からの撮影だった。
 場所は、東京藝術大学の通称‘体育小屋’で、元は東京図書館の書庫として造られた東京でも一・二を誇る古いレンガの建物内。
 部屋の真ん中に柱があって、そこを避けるのが一苦労だった記憶がある。

 撮影者は、初版を出した柏樹社の若い編集者で、正確ではないが‘アサミさん’というようなお名前の方ではなかったかと思う。
『野口体操 からだに貞く』の時には、野口は頑固に写真を拒否した。
 そこで‘あたかすみよさん’の一筆画のような柔らかなイラストで表現されることで落着いた、といういきさつを伺った。

 しかし、『野口体操 おもさに貞く』では写真を入れたいという出版社の意向に同意された。ただし、ハウツー物の説明写真にならないようにという条件で、カットとして挿入することになった。
 あえてキャプションもつけない、という約束にしたらしい。

 暗い空間で、ごく普通のカメラで、素人カメラマンが撮った写真であるけれど、今、こうして改めて‘ヨガの逆立ち’を練習しなおしている私には、非常に貴重な一枚である。
 記録とは、そういうものなのだ。
 実は、この春秋社版の写真は、私の手元に現在はある。
 柏樹社が倒産する一年前に、私の担当だった編集者が退社するにあたって、机の中を整理したら、これらの写真が出てきたらしい。
 すでに撮影した編集者は辞めていて、居所はつかめないとのことだった。
 
 それから数年以上がたって、新たに春秋社から本の再版が決まったときに、佐治嘉隆さんがもの凄く荒れていた写真をコンピューター処理して、本に載せられる状態まで修復をしてくださった、といった事情だ。

 余談だが、『野口体操 からだに貞く』の春秋社版の口絵ページ写真は、初版が出た1977年に撮影されたものではなく、二十年くらい過ぎて八十歳になるころの野口の姿である。小若順一さんによるスナップ写真だ。
 この写真掲載の相談は受けなかったので、この本が春秋社から贈られたときには、正直、びっくりした。
 商業出版だからしかたがないとしても、記録の意味からは撮影年月日を添えるなり、ひとこと断りを入れていただきたかった。

 さてさて、それはそれとして、しばらくは六十四歳の野口の写真を手がかりに、ヨガの逆立ちを練習してみたい。
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