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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第198回定期演奏会を聴く

2009年07月25日 05時39分47秒 | -オーケストラ
7月下旬に集中した、当地の音楽三昧の二週間、その開幕を告げるのは、山形交響楽団第198回定期演奏会です。会場の山形テルサホールへは、珍しく余裕を持って到着することができました。今日は、だいぶ右はじに近い中ほどの席です。妙齢の女性がお隣になり、ちょいと緊張する中で、音楽監督の飯盛範親さんのプレコンサート・トークが始まります。


今回の演奏会の曲目は、

(1) バルトーク「ヴィオラ協奏曲」(遺作) 清水直子(Vla)
(2) ブルックナー「交響曲第3番ニ短調"ワーグナー"」(1873年第1稿)

というマニアックなものです。本当は、有名名曲でプログラムを組むのが、商業的にはよいのですが、こういうプログラムで定期演奏会が可能だというところに、地方都市・山形のすごさがあります。そして、今回の演奏会は「未完の傑作」がテーマ。バルトークのヴィオラ協奏曲は、文字通り遺作となったもので、従来のシェルリー版ではなく、1995年のペーター・バルトークらによる校訂版による演奏です。
ブルックナーの交響曲第3番は、1873年の第1稿での演奏。熱烈なワーグナー崇拝者だったブルックナーが、ワーグナーの元に何度も手紙を出すのですが音沙汰がありません。そこで直接バイロイトに出向き、ワーグナーを訪ねます。玄関口でコジマに追い返されますが、スコアを渡すように頼むことができました。ワーグナーは、ブルックナーのスコアを見て高く評価してくれたので、ブルックナーは舞い上がってしまい、ビールをがぶ飲みして酔っ払ってしまうというエピソードがあるそうな(^o^)/

オーケストラの配置は、ステージ左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンが並びます。チェロの左後ろにコントラバス、正面後方に木管、さらにその後方に金管が並び、左奥にはパーカッションとティンパニが陣取ります。
ブルックナーの交響曲第3番の第1稿は、対向配置で合わせにくいということもあり、演奏が難しいのだそうです。今回は、某財団の支援により、CD録音が計画されているとのこと。第4番、第5番のCDに続き、これも楽しみです。

さて、バルトークのヴィオラ協奏曲。清水直子さんの登場です。オレンジ色のロングドレスで、黒髪を後ろにまとめ、黒っぽいリボンで留めているのでしょうか。どこからみてもジャパニーズ・ヤマトナデシコです。演奏が始まると、清水さん、とても体が柔らかいのですね。ヨガでもやっていそうな感じです。第1楽章、アレグロ・モデラート、第2楽章、レント~スケルツォ、第3楽章、アレグレット。呼吸音がはっきり聞こえます。呼吸が厳しく深い。全休止の静寂の中からオーケストラの弦が静かに立ち上がり、ヴィオラのソロが応える場面、素晴らしかった。飯盛範親さんが山響の常任に決まったときの定期演奏会、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」がほんとに素晴らしかったことを鮮明に記憶していますが、今回もまた、実にいい曲、すごい演奏です。

さて、演奏会はここで休憩となりました。当方、本日は早朝から出勤予定ですので、記事のほうもいったん休憩といたします。続きは夜に。

(ここからは、夜に追加した内容です。)

後半のプログラムは、ブルックナーの交響曲第3番ニ短調「ワーグナー」です。
第1楽章、長大な曲の指示自体が、第3稿とは違います。今回のプログラムに記載の解説によれば、ここではゲメーシヒト、ミステリオーソとなっています。手元の第3稿によるCDには、Mehr langsam, Misterioso とあります。gemassigt (中庸の速さで) と mehr langsam (さらに遅く) の違いですか。大きなうねりのような音楽ですが、後の版よりも冗長さやくどさがあると言ったら言い過ぎか(^o^)/
チューニングの後、第2楽章、アダージョ・ファイアーリヒ。Adagio Feierlich でしょうか。feierlich は「荘重に」という意味なのだとか。ここも、第3稿では Adagio-bewegt, quasi Andante となっております。弦による荘重な始まりに、木管が加わります。オーボエの音色が素晴らしい!そして両翼配置の弦楽セクションが美しい!困難さを乗り越える、山響の高い合奏能力を感じます。曲が進むにつれて音楽は次第に高揚していき、後半にはワーグナーの「タンホイザー」を思わせる旋律も。
第3楽章、スケルツォ:ツィームリッヒ・シュネル。Ziemlich Schnell でしょうか。これは、第1稿も第3稿も共通のようです。迫力のオスティナート。曲の最後の終わり方が、弓をはね上げるように離し、澄んだ響きが消えゆく余韻を味わいます。このあたり、デッドなホールではちょいとわかりにくいでしょう。
再びチューニングの後、第4楽章、フィナーレ:アレグロ。ここも、第3稿と指示は共通です。曲が始まって、途中絶妙のタイミングで咳払いが。音が大きく盛り上がっている場面ではそれほどでもないのですが、休止の真っ最中だっただけに、ちょいと残念。でも、音楽が静かに集中しているときほど、咳払いをしたくなるんですよね~、エヘン、オホン(^o^)
曲は最後のクライマックスのコーダへ。金管の健闘が光ります。

ブラボーの声が飛び、会場が大きな拍手で満たされます。指揮者の飯森さんが、Tp, Tb, Hrn そして木管を次々に立たせて健闘をねぎらい、最後に弦楽セクション、特に低弦セクションの健闘をたたえます。

特に第1楽章と第2楽章、冗長さもあり、別の曲かと思うほど異なるところもあるけれど、間違いなく「ワーグナー」交響曲です。1873年第1稿による、二管編成の澄んだ音を特色とするブルックナーの第3番。当方、日常的に聴いているのは、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団による、ノヴァーク版第3稿のCBS録音ですが、今回の演奏会は、なかなか得がたい経験でした。
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