電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『野分ノ灘~居眠り磐音江戸双紙(20)』を読む

2009年05月01日 05時55分28秒 | -佐伯泰英
坂崎磐音が佐々木玲圓・おえい夫妻の養子となって佐々木道場を継ぎ、おこんは速水左近の養女となって佐々木家に嫁ぐ、という道が明らかになった第19巻に続く第20巻は、磐音がおこんを伴い、豊後関前藩への里帰りをする船旅のお話です。

第1章「紅薊の刺客」。鰻処宮戸川の勤めを辞した磐音に、豊後関前藩の国元より、父・坂崎正睦からの書状が届きます。佐々木道場を継ぐ前に、おこんを伴い墓参の帰省をしてくれないか、というものでした。どうもそれだけではなく、国元の物産プロジェクトに、何か再び懸念があるようなのです。
第2章「夏の灸」。磐音を狙った刺客の身元を、木下一郎太が調べますが、どうもそれが虎の尾を踏んでしまったらしい。町奉行を呼び捨てにするお方からの意向で、一郎太は蟄居閉門を命じられてしまいます。
第3章「一郎太の蟄居」。5日後に出帆を控え、一郎太の暗殺を阻止すべく、磐音は秘策を打ち出します。今で言えば、マスコミを味方につけた「フライデー作戦」でしょうか。巻紙紋のお方が見事に引っかかってくれましたが、おかげで磐音は、ますます某父子には目の敵にされることになったようです。
第4章「二つの長持ち」。磐音とおこんの船旅には、佐々木道場の若い門下生である松平辰平が同行することになります。今津屋吉右衛門とお佐紀は、坂崎家への土産のほかにも、なにやら大層な荷物をおこんに持たせたようです。ただし、某父子は相変わらず磐音を目の敵にしているようで、仲睦まじい船旅とばかりはいかない様子です。
第5章「遠州灘真っ二つ」。野分とは、

二百十日、二百二十日前後に吹く暴風。台風。あるいはその余波の風。また、秋から初冬にかけて吹く強い風。のわけ。のわきのかぜ。[季]秋。

という意味だそうです。逆巻く波を船上で真っ二つに切り裂くイメージは、どこかで見た記憶があるなぁと思っていたら、思い出しました。ゼフィレッリ監督の映画「トスカニーニ~愛と情熱の日々」で、イタリアで劇場から干されてしまったトスカニーニが、ブラジルに向かう大西洋の嵐の中にダイナミックな音楽を感じ、それを指揮するシーンでした。あの映画は面白かった。もしかすると、作者も同じ映画を見ているのかもしれません(^o^)/
しかし、和服を着て海に投げ込まれたおこんさん、着物のせいで自由が利かず、着衣水泳どころではなさそうです。もし、このシーンをテレビや映画で撮影するときは、相当の慎重さが必要でしょう。映像作品でなく、小説だから良かったのかも(^o^)/
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