電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」を聴く

2009年05月10日 06時05分00秒 | -室内楽
昔、1970年頃に、金曜夜の NHK-FM で、室内楽を特集しておりました。解説は海老沢敏氏だったと思います。このテーマ曲が、シューベルトの弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」の音楽とのこと。いかにも室内楽らしい、チャーミングな旋律で、いちど全曲を聴いてみたいものだと思っておりました。80年代も終盤に入った頃に、DENON がヌオーヴォ・カルテットによる新録音をCD化して発売したのを、行きつけのお店で偶然に見つけ、入手しました。こういう地味なCDが商売になるのかどうか、不明ではありますが、バブル最盛期の当時、DENON レーベルは次々に好企画をリリースし続けておりました。室内楽の、しかも弦楽四重奏曲を象徴するのは、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンといった古典派の作品が中心ではありましょうが、近現代の斬新な作品とも異なる、シューベルトの弦楽四重奏曲の魅力もまた、独特の親密な雰囲気を持った新鮮さがあるように思います。

さて、この曲は、1824年2月に着手され、3月に完成したものだそうで、後期の3曲のうち、もっとも早く成立し、シュパンツィヒ弦楽四重奏団により、完成間もない3月14日に、ウィーン楽友協会ホールで初演されたそうです。シューベルトの弦楽四重奏曲の中では、唯一作曲者存命中に公開演奏された曲とのことです。

第1楽章、アレグロ・マ・ノン・トロッポ、イ短調、4/4拍子。非常に緊密な響きの中に、悲しみと慰めが同居するような、全曲中もっとも長い楽章です。曲の冒頭で、「城ヶ島の雨」の「あ~めは」を連想するというのは、実は内緒です(^o^)/
第2楽章、アンダンテ、ハ長調、2/2拍子。ここが例の「ロザムンデ」の音楽です。最初にこの楽章の冒頭だけを聴いたときには、なんてチャーミングな音楽だろうと思いましたが、全曲を聴いて、特に第1楽章の悲しみの色に驚いたものでした。四つの楽章の中で、2番目に置かれた絶妙の位置に、感心してしまいます。
第3楽章、メヌエット:アレグレット、イ短調、3/4拍子。チェロに導かれ、優雅なメヌエットの性格はきちんと保ちながら、再び悲しみの影と慰めが現れている音楽が流れ出します。ヴァイオリンは表情を変えますが、ヴィオラはずっと嘆きを呟いているかのよう。途中で曲調が変わり、チェロがぐっと表情豊かに出てきますが、冒頭部が再現され、終わります。
第4楽章、アレグロ・モデラート、イ長調、2/4拍子。ヴァイオリンから。悲しみの影はぐっと後退し、リズミカルで軽やかさのある、活発な音楽となります。緊密な構成感をも持っており、音楽による昇華というか、ある種のカタルシス感のある楽章です。これが終楽章として配置され、ベートーヴェンが没する3年前という時期の、研究と書法の進展を見るか、シューベルトの成熟の境地を見るか、天性のメロディーメーカー、旋律の大家というだけではないものが感じられるようです。

1987年4月13日~15日、イタリアのウニヴェルシタ・エウロペア・サン・ドメニコにおけるPCM(デジタル)録音、明るい音色の演奏はヌオーヴォ・カルテットで、制作は川口義晴氏。型番は、DENON 33CO-1849 で、変ホ長調の弦楽四重奏曲(D.87)が併録されています。

参考までに、演奏データを示します。
■ヌオーヴォ・カルテット
I=14'31" II=8'53" III=7'30" IV=7'29" total=38'23"
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