電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団特別演奏会「五月の風」さわやかコンサートを聴く

2009年05月03日 17時28分35秒 | -オーケストラ
「らびおがゆく」の記事(*)で、山形交響楽団特別演奏会「五月の風」さわやかコンサートの開催を知り、午前中に畑仕事を済ませ、妻とともに文翔館に出かけました。余裕を持って13時に到着と思ったら、文翔館駐車場はすでに満車寸前で、あと1~2台というタッチの差でセーフ。やはり、開場前に余裕を持って到着する必要がありそうです。



文翔館議場ホール前の広場は、チューリップの花が咲き、若葉に文字通り五月の風がさわやかに通り抜けて行きます。少し会場周辺を写真撮影し、ホールに入ります。客席は、4-5-4 の13人×10列+αといったところ。室内楽にはちょうどよいホールでも、オーケストラにはやや手狭な感じです。よく響くホールに合わせ、編成もぐっと小さくして、第1・第2ヴァイオリンは第3プルトまで、ヴィオラとチェロも第2プルトまで、といった具合。でも、木管・金管はほぼ基本的な二管編成を維持しているようです。山形弦楽四重奏団のチェロ奏者である茂木さんやヴィオラの倉田さんは、「おしどり参加」の様子です。今回の演奏会では、団員の皆さん黒っぽい略式服に各自明るめのネクタイ等、少しくつろいだ雰囲気を演出しています。表情もにこやかで、定期演奏会の前の緊張した雰囲気とは少々異なるようです。

開演5分前には、130席余りの座席はすでに満席で、かなり立ち見が出ているようです。この演奏会は、山形交響楽協会と山形県生涯学習財団が共同で主催するもので、入場無料であるだけでなく、曲と曲の演奏の合間ならば出入りも自由と、いつもの「クラシックの演奏会」とはかなり様子の違うコンサートです。司会は板垣幸江(Itagaki Yukie)さん。指揮は工藤俊幸(Kudou Toshiyuki)さん。

1曲め、グリーグの「ペールギュント」第1組曲より「朝の気分」。工藤さんらしい、丁寧な指揮ぶりです。
2曲め、ヘンデルの「水の上の音楽」より「ア・ラ・ホーン・パイプ」。会場によく似合う響き、ぴったりです。オーケストラ全体が演奏する中でも、クラリネットやオーボエやファゴットが、リズムを刻むようにポッポッポッポッポッと吹いているのがよく聞こえ、響きの良いホールであることを再確認。
第3曲、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」より。おやおや、司会者の説明が、誰でも「聞いたことはない」くらいの名曲?「聞いたことのない人はいないくらいの名曲」の間違いでしょう。ちょっと緊張したのかな(^o^)/
この曲では、コントラバスの動きに注目しました。弓をはね返すような奏き方をして、重いコントラバスからあのようなリズミカルな音を出すのですね。
第4曲、服部公一「最上川ファンタジー」。チェロが旋律を奏しますが、力強い曲調です。リズムは民謡のものではなく、やや現代風、ジャズ風。Fl-Ob-Cl-Fgと続く下降音型の音色の繋がりが素敵です。

ここで、司会者が映画「おくりびと」の話題を出します。映画に出演していたオーケストラは山形交響楽団で、と紹介したところで、聴衆から自然に拍手。映画で主人公の隣に座り、一番たくさん話をしたというチェロの渡邊研多郎さん、モッくんの印象を聞かれて、すごくかっこいい人だ、と答えていました。これはまあ、普通ですね。もちろん、司会者はそれでは許しません。本木さんのチェロの練習について質問します。渡邊さんの答え:本木さんは(第九の)譜面は読めないので、数えながら指の位置を覚えていました。ちょうどダンスのように。実際に音を出すと、相当に練習したのでしょうが、それらしい音が出てくるので驚きました。弓の位置や角度などにも気を遣い、ほんとにさまになっていました。
なるほどなるほど。司会者は、今度は酒田市出身の指揮者・工藤さんに矛先を変えます。「おくりびと」の映画をご覧になりましたか?
工藤さんの答え:大好きな映画で、もう8回も見ました。映画館で観るのが好きなので、DVDはまだ買っていません。
司会者の質問は、工藤さんと音楽との出会いに。
工藤さん:テレビっ子で、アニメソングが大好き。小学校低学年で、シングル50枚持っていた。中学校の時、YMO のテクノブームがあり、坂本龍一さんに憧れた。坂本さんは芸大の作曲科卒。自分も音大の作曲科に進み、クラシック音楽が面白くなった。
芸能界の顔でもないし、と謙遜しながら、生の音を聴く楽しみ、生の演奏を観る楽しみを語ります。まじめで人柄の良い、でも演奏前に指揮棒を忘れて取りに戻ったりする、おちゃめなところもあるコンダクターです。

続いて第5曲、岡野貞一「ふるさと」。第6曲、アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」。思わず歌い出したくなります(^_^)/
第7曲、エルガーの「愛の挨拶」。これは妻のお気に入りの曲です。音楽もですが、エルガーとキャロラインさんのエピソードもお気に入りの理由かもしれません(^_^)/
さて、チューニングの後、最後の曲目、ウェーバーの歌劇「魔弾の射手」序曲です。讃美歌の「主よ み手もて 引かせ給え ただわが主の 道を歩まん」の旋律の後に、チェロからほの暗い劇的な音楽が始まります。正面の茂木さんの表情も真剣そのもの。コンサート・ミストレスの犬伏さんも、はずむように大きく、力感のこもった演奏ぶりで全体をリードします。チェロの静かな旋律のあとに、全休止。そのあとは全奏で盛り上がって終止へ。う~ん、満足!
聴衆の大きな拍手に応えて、最後は「ラデツキー行進曲」で。こちらも大いに盛り上がり、楽しい演奏会でした。

文翔館を後に、駐車場に向かうときに、赤い大きなチェロ・ケースと、黒い小型のヴァイオリン・ケースを肩にしたおしどり二人連れが歩いて駐車場を横切るのを目撃。たぶん、茂木夫妻と思われます。

この後の当方の足取りは、山形市のお菓子屋さん「シベール」が、本社脇に建設した「遅筆堂文庫」とシベール・アリーナを見学、シベールで甘~いモンブランでコーヒーを飲みました。早朝の農作業の疲れからか、甘いものがおいしかった!

(*):「らびおがゆくVol.3」より~「チューリップ&山形響」
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