電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『小泉八雲集』を読む

2009年02月02日 06時53分47秒 | 読書
新潮文庫で、上田和夫訳『小泉八雲集』を読んでいます。子供のころ、断片的に読んではいるのですが、大人向けの本として、全部を通読するのは初めてです。
「むじな」や「耳なし芳一」や「雪女」の話などはともかくとして、むしろ驚かされるのは、「日本人の微笑」についての分析など、日本文化や伝統についての考察です。本名ラフカディオ・ハーンの周囲には、よほど立派な日本人が集まっていたのではないかと思えるほど、教養ある日本人や日本文化への好意的な見方が印象的。ただし、それも西洋の文明や社会に対する、かなり皮肉で激しい絶望や嫌悪のもたらすものであるようで、礼賛を額面どおりに受け取ることはどうかと思われます。
にもかかわらず、「停車場にて」や「赤い婚礼」などの印象的な短編は、たいへんに劇的な効果を示しながら、記憶に残る文章になっています。

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4 コメント

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文化的な帰化 (安倍禮爾)
2009-02-02 20:17:45
narkejpさん

 小泉八雲というと、今風に言えば、文化的に日本に帰化した外国人のハシリというイメージでしょうね。もう時代も相当前ですから、様々な困難もあったでしょうし。
 ただ、今、思うとやはり、これほど日本文化にも造詣の深い人が、作品は英語というのは、今になって解る気がしますね。日本語というのは聴く、話す、は、まだしも、読む、更に、書くというのは、外国人にとっては至難の業ですから。流石の小泉八雲も、自らが持つ文学的な才能をフルに発揮して作品を作るには、日本語では不十分だったんでしょうかね。あるいは、私が知らないだけで、日本語による優れた作品もあるのかな?
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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2009-02-02 22:38:29
コメントありがとうございます。「勇魚」を書かれたC.W.ニコルさんも、英語で書いてますね。語学は、やはり若い時代にやらないと、ネイティヴのように読み書きできる力は蓄積されないように思います。内村鑑三や新渡戸稲造は英文で本を書いていますが、これは若いころの精進の成果でしょう。ラフカディオ・ハーンは、日本語の読み書きができるほどの蓄積はなかったのではないかと思います。見方や分析は鋭いけれども、背景の厚みはあまり感じられませんで、むしろ西欧文明の批判に力点があるような気もします。
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Unknown (さちこ)
2009-02-05 19:01:16
こんばんは。
ご無沙汰しております。
ああああ、この本!愛読してますううう。
昔から雨月物語とか好きで、小泉八雲も好き。
短編は、読んでもまた忘れてしまい、何度も読んでます。
「日本人の微笑」、印象深いですね・・・・。
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さちこ さん、 (narkejp)
2009-02-05 19:32:31
コメントありがとうございます。大人になって読む怪奇譚は、なかなか面白いものでした。『雨月物語』もお好きですか。では、岩波文庫の『聊斎志異』などもいいかもしれませんね。とても面白かったですよ(^-^)/
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