電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

モーツァルト「ピアノ協奏曲第25番」を聴く

2008年10月30日 06時42分58秒 | -協奏曲
どうも風邪気味のようで、鼻水がでます。このところ、休みなしに緊張が続いたせいか、それとも暖房なしの寒さがこたえているのでしょうか。部屋でゆっくりと音楽を聴きました。あたたかいご飯とモーツァルトの音楽で体調の維持を図りましょう。

モーツァルトのピアノ協奏曲第25番は、1786年の作品だそうです。完成の二日後には交響曲第38番「プラハ」を完成させているのだそうで、なんとも早業です。ハ長調の調号にふさわしく、翳りをもちながらも、基本的には明快で構成感のある音楽です。

第1楽章、アレグロ・マエストーソ。堂々たる開始。どこか「フィガロの結婚」を連想させるフレーズがところどころに顔を出し、明るさの中にもどこか翳りを見せる音楽です。カデンツァは、パウル・パドゥラ=スコダによるものです。
第2楽章、アンダンテ。木管と弦に導かれた提示の後に、ピアノによって反復され、さらに優しいニュアンスをこめたピアノの分散和音による短い中間部が続きます。再現部もすてきです。
第3楽章、アレグレット。映画「アマデウス」の舞踏会のシーンのような、踊るように軽やかなロンド形式によるフィナーレです。途中のちょっとした転調や、対照的な旋律に彩られながら反復され、最後に力強いコーダで終わります。

楽器編成は、独奏ピアノと弦五部、Fl-1、Ob-2、Fg-2、Hrn-2、Tp-2、Timp というもの。クラリネットを欠いていますが、上手な奏者が少なかったのか、中声部の響きをわざと薄めにしたかったのか。演奏時間が30分を超える、堂々たるピアノ協奏曲です。

当時のウィーンで、なぜ晩年のモーツァルトの予約演奏会の人気が落ち、開くことが困難になったのか、不思議です。来るべき荒々しい変動の時代の空気にあわなくなったのか、それとも単に浮気な聴衆に飽きられたのか。産業革命前のウィーンでは、急激な人口増加はまだ起こっておらず、おそらく数十万人規模で、現在の山形市や天童市等を含めた、村山盆地程度の人口と思われます。ハプスブルグ家の権威はまだまだ大きく、貴族階級を揶揄したダ・ポンテの「フィガロの結婚」の思想を、王室に睨まれた可能性もあります。

演奏は、アンネローゼ・シュミット(Pf)、クルト・マズア指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団。1972年11月19~22日、ドレスデンの聖ルカ教会にて録音された、独オイロディスク社原盤によるCD(DENON COCQ-84104)です。自然な響きのアナログ録音で、演奏の良さもあいまって、とても気持ちよく聴くことができます。

■アンネローゼ・シュミット(Pf)、マズア指揮ドレスデン・フィル
I=14'11" II=6'48" III=9'43" total=30'42"

解説書の時間表示と実際のトラック時間表示とに数秒程度の食い違いがあり、解説書の方が長くなっています。たぶんこれは、無音部も含めた表示になっているものと判断し、実際のトラック時間表示を採用しました。
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