電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

百科事典の温故知新~昭和55年の『百科事典操縦法』

2008年10月18日 06時50分20秒 | 手帳文具書斎
新書用本棚の整理をしていたら、平凡社の『世界大百科事典』の底辺拡大でしょうか、平凡社刊の『百科事典操縦法~1000万人の情報整理学』という新書を見つけました。梅棹忠夫、加藤秀俊、小松左京という三人の著者の顔ぶれからみても、「慢性百科事典中毒症を自認する人類学者と社会学者とSF作家、少なくとも日に5~6回は百科事典を開くという百科事典通たちが、体験をまじえて語る愉快な百科事典のノウハウ集」という触れ込みは魅力的でした。本書が刊行された当時、昭和55年には、世界大百科をど~んと購入するほど年収に余裕はなかったのですが、図書館などでお世話になる機会は多く、このような新書を購入していたのだろうと思います。

で、Wikipedia や『世界大百科DVD』が机上で検索できる現在において、この新書の中に詰まっているノウハウは、現代にも通用するものがあるのでしょうか?

結論として、大部分のノウハウは書籍という形に対応したものであり、書籍の中にある知識や情報そのものに関するものは意外に少ないために、現在に通用するものは多くない、と感じました。

ただし、一部なるほどと思ったことがらもありました。自分で実践して便利だと思ったこともふくめて列記してみると、こんなところでしょうか。

(1)「まず索引」 これは、「まず検索」に置き換わっています。むしろ、検索キーワードの選び方や、and/or 検索の用法などが重要でしょう。
(2)百科事典のページをコピーして旅先に持参 ガイドブックよりも客観的でデータも詳しく、たいへん便利です。今ならば、Wikipedia 等の該当項目のプリントアウトでしょうか。初めて訪れる都道府県の概要は、たいへん参考になります。
(3)物量や重さからの解放 本書の言う「社会に蓄積された情報を、私たち大衆の一人一人が利用しやすい形で整理して保存するシステム」からイメージされるのは、まさに Wikipedia のようなものでしょう。

書籍の形の百科事典には、作曲家「グスタフ・マーラー」についての記述はあるだろうけれど、具体的な楽曲、たとえば交響曲第1番「巨人」についての詳細な記述は期待できません。しかし Wikipedia では、内容的にも突っ込んだ、かなり詳細な記述があります。ブログ記事のために曲目の周辺を調べるには、圧倒的に便利です。このあたりに、本質的な進歩を感じます。
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