電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第191回定期演奏会を聴く

2008年08月24日 08時08分44秒 | -オーケストラ
8月23日(土)、午前中に果樹園の後始末を終え、小雨のぱらつく夕方から、帰省中の息子とともに、山形交響楽団第191回定期演奏会に出かけました。会場は山形県民会館、今日のプログラムは、「エスプリ・ド・フランス」と題して、ドビュッシー、サン・サーンス、ミヨー、デュカスという組み合わせです。あいにくのお天気、しかも有名曲を柱としないプログラムで、聴衆の入りが心配されましたが、開演前には、ステージ直前や両端を除き、おおむね良好な入りとなりました。

今日の指揮者は、首席客演指揮者の阪哲朗さん。プレトークが始まります。明治維新の頃のパリ万博で浮世絵の紹介があり、世紀末のジャポニズムが起こったこと、ドイツ音楽の時代にはフランスにはあまり今に残る作曲家が現れず、ラモーやクープランの時代の後には音楽教育が熱心に行われたこと、サン・サーンスはパリのコンセルヴァトワールの院長であったこと、デュカが今回のメインになるが、先生が和製の大家デュポアで、この人の和声学の教科書を阪さんも勉強したのだそうな。限られた形式の中でもフランス風の色彩的な和音がある。涼しい感じが出せればいいなぁ、とのことです。

今回は、第1ヴァイオリンが左側で第2ヴァイオリンが右側に分かれる対向配置です。第1ヴァイオリンの後方にチェロ、第2ヴァイオリンの後方にヴィオラが並び、コントラバスが左後方に、以下順にハープ、パーカッション、ティンパニがその右に続きます。木管にはオーボエに新人奏者が入っていました。佐藤麻咲さんです。そしてその後方に、出番の多い金管部隊が並びます。

最初の曲目はドビュッシー「子供の領分」より、カプレ版による演奏です。
第1曲、グラドゥス・アド・パルナッスム博士。はじけるようなリズムを指示します。
第2曲、象の子守歌。ホルンとオーボエに続く、コントラバスがいかにも象の子守歌です。
第3曲、人形へのセレナード。しゃれた感じのリズムが軽快で、たしかに人形ですね。
第4曲、雪はおどる。粉雪が舞うイメージでしょうか。ヴァイオリンは弓の先っぽだけ使い、フルートやオーボエに、ミュートのついたトランペットでしょうか、いかにも雪が降ります、という感じが出ています。
第5曲、小さな羊飼い。オーボエのソロ、クラリネットとファゴットがハモり、フルートが弦と。音色の交替が見事です。
第6曲、ゴリウォッグのケークウォーク。いかにも楽しい曲想です。ヴィオラが面白い役割。この曲では、一生懸命やっていますというのではシャレになりません。軽さが出ていたように思います。

次の曲は、サン・サーンスの交響詩「オンファールの糸車」。楽器編成は多彩ですが、ハープの音が目の助けでようやく聞き取れます。ヴァイオリンの対向配置が面白い掛け合いの効果を生んでいます。今日はオーボエが活躍する機会が多いですね。ヴァイオリンの最弱音で、消え入るように終わります。

三番目、ダリウス・ミヨーの「屋根の上の牛」(*)。だいぶ編成も小さくなり、ブンチャカブンチャカ面白い曲です。かと思うと流れるようなところもあり、それが交互に出てきます。ちょいと中南米ふうな、映画の音楽みたいです。トロンボーンが面白い音を出し、阪さんの指揮ぶりもユーモラスです。なんとも楽しい、なかなかいい曲ですね!大いに愉しみました。

休憩時には、新しい山響グッズが販売されていましたので、オリジナルのトートバッグ5色を、各色1個ずつ購入しました。老母と妻と娘と息子と私のマイバッグにしようと思います。@800×5=4,000円也。ちょっと嬉しいお買い物気分です。

後半は本日のメインプログラム、ポール・デュカスの交響曲ハ長調です。ハープやシンバル、バスドラムなどが退きますが、ホルンが5本、ファゴットも3本など、だいぶ強化されたところもある編成です。自己批判が強く、多くの作品を自ら破棄してしまったデュカスが、自信を持って発表した数少ない作品、さすがにいい曲です。第1楽章は、透明感のある、近代的な響きです。少し飛び出し気味に感じられた箇所もありましたが、リズムによく乗り、爽快感があります。
第2楽章は悲歌でしょうか。しかし深刻にならずに、静かに美しく。演奏する側は、たぶん、たいへんに集中力を求められる音楽でしょう。途中、弦と木管だけになり、金管はほとんどお休みとなりますが、やがてホルンが導き、金管部隊が加わり、素晴らしい響きを聞かせます。始めの主題が再現され、しっとりと終わります。
第3楽章、勇壮な雰囲気を持ったロンド・フィナーレといったところでしょうか。でもカラ元気ではなくて、あくまでもしっとりとした音楽がベースになっています。管楽器の使い方がとてもうまい!音色をつないでいくところや、比較対照するようなところ、それまろやかに響きを重ねるところに、弦のリズミカルな動きもあって、たいそう魅力的です。ファンファーレの要素も含む、近代オーケストラ音楽好きにはたまらない魅力です。

ブラボーがかかり、拍手がなかなかなりやまず。指揮者の阪さんが何度も呼び出されて、今回、山形でデュカスの交響曲がこれだけ支持されるとは、ちょいと見直しました。間違いなく指揮者とオーケストラの功績でしょう。今回も、いい演奏会でした。息子も大喜びでした。四十九日も終わらないうちに歌舞音曲を楽しんでおりますが、なに、老父はそんな了見の狭い人ではありません。日中、畑仕事に精を出した息子と孫が、地元オーケストラの演奏会で喜ぶさまを、天国でニコニコ笑って見ていた事でしょう(^_^)/



写真は、購入してきた山響オリジナルのマイバッグ。赤は妻が、緑が老母、白を娘、青を息子が選び、私のはど派手な(?)黄色が残りました(^o^)/
コンパクトに折りたたんだときに底革がカバーになり、皮革部には山響のシンボルマークがある、というものです。マイバッグ運動にも貢献しそうです。

【追記】
ダリウス・ミヨーの「屋根の上の牛」は、「へ~」と驚く意外な内容の音楽喜劇のようです。
(*):「中爺通信」より「屋根牛」
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