電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

シューベルトの「さすらい人」幻想曲を聴く

2008年08月16日 07時01分44秒 | -独奏曲
このところ、シューベルトの「さすらい人」幻想曲を聴いています。1816年の歌曲「さすらい人」D.493の旋律をもとに1816年にウィーンで作曲された、ハ長調の4楽章形式の幻想曲です。CDに添付の解説を読むと、それぞれ明確な調・速度表示を持ち、はっきりした性格を持っており、実際は4つの楽章からなるソナタと見ることもできるのだとか。ピアノ・ソナタでありながら、主題の統一性や、四つの楽章が切れ目なしに演奏されるという特徴などに、25歳のシューベルトが試みた、幻想曲という野心的な実験と感じられます。

第1楽章、アレグロ・コン・フォーコ・マ・ノン・トロッポ。主和音が連打される、非常に明瞭な冒頭のリズムが、曲全体を統一しています。曲の始まりでは、いつものシューベルトのイメージとはだいぶ異なり、力感あふれる雄渾な印象を受けます。
第2楽章、アダージョ。歌曲「さすらい人」を主題とした変奏曲。いかにもシューベルトらしい、しみじみと聴くことができる、美しい音楽です。
第3楽章、プレスト。スケルツォ楽章に相当するのでしょうか。リズムは共通の主題と共通のもので、活発に変奏されていきます。トリオ部では冒頭主題がチャーミングに登場。そして、再びスケルツォに戻ります。
第4楽章、アレグロ。シューベルトらしからぬ、ヴィルトゥオーゾ風の見得の切り方ですが、あるいはこれもシューベルトの本来の姿なのかもしれません。

アルフレッド・ブレンデルの演奏(Ph UCCP-7057)は、シューベルトのピアノ曲の録音に精力的に取り組んでいた1970年代のもの。1974年6月にロンドンで収録された、フィリップス原盤のアナログ録音です。速い部分はぐいぐいと、ゆるやかな部分は詩情豊かに演奏しています。速いパッセージも流されずに、技巧が音楽に奉仕している感じ。録音は今なお良好なもので、低音の質もどんよりしたものではなく、好ましい響きです。前半部はやや抑え目に、最後の楽章に向かって次第に盛り上がっていくような構成を意図しているようです。

ミッシェル・ダルベルトの演奏(DENON COCO-70700)は、1993年から94年にかけて、スイスのコルゾー、サル・ド・シャトネールでデジタル録音されたもので、シューベルトを得意とするピアニストらしく、やや遅めのテンポで、ダイナミックかつ詩情豊かな演奏です。意図的に演奏したのでしょうか、それとも録音のせいでしょうか、低音が豊かで明瞭に響きます。どちらかといえば前半部の幻想性が印象的ですが、後半部の巨匠的なところも、シューベルトらしい、割り切り過ぎない沈潜の感じられるものになっているように思います。

■ブレンデル(Pf)盤
I=6'02" II=6'43" III=4'48" IV=3'31" total=20'04"
■ミッシェル・ダルベルト(Pf)盤
I=6'30" II=7'16" III=5'13" IV=3'36" total=22'35"

写真は、2枚のCDとポータブルCDプレイヤー、ブログ記事ネタ用ノートと、ごろ寝の際に愛用している、枕がわりのクッションです。当地の朝晩はやけに涼しく、ごろ寝には最適。残暑を嘆く南国の皆様方には申し訳ないほどです(^o^)/
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