電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

オーディオに別れを告げた理由

2008年06月23日 06時05分37秒 | クラシック音楽
1960~70年代の初め頃、オーディオが趣味だ、という人がたくさんいました。かくいう私もその一人です。FMステレオ放送やLPの音に魅せられて、自分の部屋で音楽に耳をかたむけることができる環境を作ろうと、アルバイトやお小遣いの範囲内で、様々な工夫をしたものでした。

いろいろ苦労のすえ、入手したアンプは ONKYO の Integra725 で、レコードプレーヤーは PIONEER の PL25E、ヘッドホンが同じパイオニアの SE-L30 で、スピーカは FOSTER(当時) の FE203 を使った自作バックロード・ホーンでした。これで、小規模なコレクションでしたが、クラシック音楽のLPを、本当によく聴きました(*)。

就職し社会人となってからは、Audio Union 等に通い、今も使っている YAMAHA のスピーカ NS-650 を購入するなど、せっせと機器を充実しました。また、郷里にUターンしてからも、カセットデッキ2台にアンプを更新し、思い切って初代のCD/LDコンパチブル・プレーヤーを導入するなど、けっこう熱心に、今から思えばお金もかけていたと思います。

ところが、ある時期から、ぱたっとオーディオ熱がさめてしまいました。たぶん、スピーカー・ケーブルで音が変わる、ケーブルの素材や純度で音が変わる、などの言説がまかりとおるようになって、理系人間にはどうも違和感のほうが強くなってきたからだと思います。もしケーブルの電気抵抗が問題になるのであれば、金属の電気抵抗が温度によって変わるということをどう考えるのか。室温も変化し、機器の内部温度も大きく変化します。ありえない!

おそらく、一般家庭にステレオ装置が一通り普及し、オーディオ機器の売行きが鈍って来たために、もともと狭いオーディオ雑誌業界が整理の時代に入り、オーディオでは多くのライターが食えない時代になったのではないかと想像します。その中の誰かが、飯の種に考え出したのが、スピーカー・ケーブルという「新ジャンル」だったのではないか。

また、オーディオを趣味とするような人達は、HiFiビデオ技術や、当時ようやく興隆期にあったパーソナル・コンピュータに夢中になって行ったのでしょう。CPUも8ビットから16ビットへ進化していきましたし、ソフトウェアもBASIC等の言語で自作する時代から、CP/MやDOS等のOSの上で動作するアプリケーションの時代に変わって行きました。パソコン雑誌が雨後の筍のように登場した時代に追従していくのも大変でした。おそらく、テクニカル・ライターと呼ばれる人達も、かなり分野を移行していったのではないかと思います。当方も、御多分に洩れず、パーソナル・コンピュータにどっぷりと浸るようになりました。ケーブルによる音の違いなどという世界よりも、config.sys に記述した FEP(かな漢字変換フロントエンドプロセッサ)や各種ドライバの役割などを理解する方が面白くなっていったものです。

標題について、いわゆるオーディオに別れを告げたとはいっても、今でもオーディオ機器に関心はありますし、良い条件で聴きたいという気持ちに変わりはありません。ただし、その関心はあくまでも「音楽を聴く楽しみ」のためであり、「音の追求」のためではないのです。

(*):レコード音楽の集め方がどう変わったか~「電網郊外散歩道」より
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