電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

朝日新聞土曜版beに鶴岡市の「オーディオラボ・オガワ」が

2008年03月25日 05時58分33秒 | Weblog
3月22日付け朝日新聞土曜版be(*)に、鶴岡市の専門店「オーディオラボ・オガワ」(*2)の記事が掲載され、びっくりしました。昔、昭和50年代の後半だったと思いますが、何度か行ったことがあるお店でした。たしか、旧7号線、山大農学部からNHK鶴岡放送局に向かう道の途中の左手にあったんじゃないかな。当時の記憶ですが、店内にはかなりの数の外国製スピーカが並び、タンノイやJBLといったメーカーの各種製品の音を試聴することができました。当方は妻子持ちでしたが、独身貴族を謳歌していた当時の同僚が同店から購入した「ハーベス」のスピーカの音が素晴らしかったことが思い出されます。

もちろん、記事の眼目はそんなところにはなく、専門誌『ステレオサウンド』誌から「ゴッドハンド」と呼ばれた、佐藤絹子さんらの修理工房チームのすごさです。古いヴィンテージ・スピーカを大切にし、修理してしまうビジネスが成り立つことに驚くとともに、ちょっぴりヨーロッパ文化のような歴史の香りもします。たぶん、鶴岡市にはそんな雰囲気があるのでしょう。英国グッドマン社のAxiom-80なんていう名称を読んだのは、何十年ぶりでしょうか。

佐藤さんの経歴が興味深い。山形県最上郡鮭川村生まれ、72年に天童市の東北パイオニアに入社、当時はスピーカ製造の拠点でした。真室川町にある最上電機(*3)で製造したスピーカ・コーン紙をもとに、スピーカ・ユニットを製造する工場です。この製造ラインで働いていたから、ユニットのことがよくわかる。しかも、結婚退社後に勤務した酒田通信機羽黒工場で、スピーカの品質管理を担当、測定や検査技術を磨いたものと思われます。製造から検査まで、全工程を知る強みと抜群の聴覚が結び付き、ヴィンテージ・スピーカの修理というビジネスに結実したのでしょう。

現在の東北パイオニアは、カーステレオ事業を中心として、有機ELなどを製造する優良会社でしたが、親会社のプラズマ事業などの不調を引き受けてその傘下に入ることになりました。液晶でトップ企業のシャープが興味を示したのは、東北パイオニアの米沢工場における有機EL技術を、将来の布石として高く評価したためではないかと思います。どこの会社でも、オーディオ事業は撤退または傍流になって久しいわけですが、時代の流れを感じずにはいられません。

(*):よみがえる往年の音と響き~ビンテージ・スピーカー修理の達人・佐藤絹子さん~asahi.com より
(*2):オーディオラボ・オガワのWEBサイト
(*3):記事中にある、山形の水が世界的なスピーカ・コーン紙を生んだ、という箇所は、おそらくこの会社のことを指していると思います。
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