電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

DENONのクラシック録音の裏側

2008年03月09日 06時12分36秒 | クラシック音楽
日本コロムビアというレコード会社が、日本ビクターと並ぶ老舗であることは、中年世代にとっては自明のことでした。ところが、1969年にCBSがソニーと合弁してCBSソニーというレーベルを立ち上げたことは、さすがに大きな痛手だったことでしょう。クラシックの売り上げなど、当時の歌謡曲の隆盛からは比較にならないものだったかもしれませんが、その直接的な対応策が、あのクラシック・レコード界初の「ダイヤモンド1000」シリーズ(*1)の企画だったのではないかと推測しています。本来は競争力が低下した録音を、廉価盤シリーズとして普及させようとした苦肉の企画は、当初の意図を超えて、クラシック音楽愛好者の裾野を広げることに貢献したと思います。

それでも、まだパイヤール管弦楽団等を擁するエラートがあり、バロック・ブームでヴィヴァルディの「四季」がベストセラーになる時代ですので、なんとか老舗の格を保っていたわけですが、その稼ぎ頭のエラートがビクターに移籍するに及んで、これはなんともならない。残ったのはチェコのスプラフォンと東独のオイロディスクだけという有り様では、金銀飛車角みな失い、桂馬と香車で将棋をさそうというようなものでしょう。

70年代初頭、技術的にはほとんど手作りに近いとはいえ、PCM録音機の第1号機が完成しており、付加価値の高い国内録音によって自社レーベルを育てて行く、という選択肢は可能でした。初めはややキンキンした弦楽の録音に辟易させられたものの、ピアノの低域の鮮明さは格別でした。やがて、技術的な進歩とともに録音会場も海外へ移行し、ホールの音を生かした、優れた録音を輩出するようになりました。このあたりの事情を、ぜひ当事者の証言で知りたいものだと念願していたところ、プロデューサーの一人である川口氏のインタビューがあることを、本ブログにしばしばコメントをいただく 望 岳人 さんのサイト「日々雑録 または 魔法の竪琴」(*2)で知りました。

ここに紹介された、「音楽プロデューサーという仕事」という連載インタビュー記事(*3)が、いや~実に面白い。抜群の面白さです。今は会社を離れたためか、歯に衣着せぬ物言いで、語ってくれています。必ずしも客観的で公平な視点というわけではなく、プロデューサーとしての川口氏独自の見方ではありますが、デジタル録音黎明期から普及期にいたる、我が国の代表的クラシックレーベルの内幕を知ることができます。



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(*1):大木正興氏とダイヤモンド1000シリーズのこと~「電網郊外散歩道」記事より
(*2):日経ビジネス オンライン(NBonline)の音楽記事~「日々雑録 または 魔法の竪琴」より
(*3):NBonline記事より、「音楽プロデューサーという仕事」
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