電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

「白鳥ーチェロ名曲集」を聴く

2007年10月20日 05時50分09秒 | -室内楽
チェロの音色がお気に入りなもので、「チェロ名曲集」などという題名を見ると、ついつい手が伸びます。これまでも、チェロソナタやチェロ名曲集といった室内楽や独奏曲のCDを記事にしてきました(*1~*7)が、本日の、DENON の My Classic Gallery シリーズ中の1枚(GES-9260)は、ヤーノシュ・シュタルケルのチェロ独奏によるものが多く収録されています。

(1) サン=サーンス、「白鳥」
(2) シューベルト、「楽興の時」第3番 作品94-3
(3) ブロッホ、「祈り」
(4) ポッパー、「タランテラ」
(5) ウェーバー、「アダージェットとロンド」
(6) シューマン、「トロイメライ」
(7) カザルス、「鳥の歌」
(8) フォーレ、「シシリエンヌ」 作品78
(9) フォーレ、「夢のあとに」 作品3-3
(10)ポッパー、「ハンガリー狂詩曲」 作品68
(11)ファリャ、「火祭りの踊り」
(12)パガニーニ、「モーゼ幻想曲」
(13)カステルヌオーヴォ=テデスコ、ロッシーニ「セヴィリャの理髪師」より「フィガロ」
(14)グラナドス、「ゴイェスカス」間奏曲

特におもしろく感じたのは、シューベルトの「楽興の時」第3番や、ファリャの「火祭りの踊り」、パガニーニの「モーゼ幻想曲」、カステルヌオーヴォ=テデスコの「フィガロ」など。「楽興の時」第3番は、NHKラジオで日曜朝の「名曲の泉」とかいう超・長寿番組のテーマ曲に使われていたかと思います。これがチェロで演奏されると、なんとなく、しみじみと哀愁を感じさせる音楽になります。

ツルゲーネフに『父と子』という作品があります。田舎で父親が素人チェロを愛好しながら、自足した生活を送っている。息子はそれに満足せず、父と対立し、都会に飛び出そうとする。若い頃に読んだこの場面が、なんとも印象的でした。今、中年の息子として老父の検査結果を待ちながら、同時に若い息子を持つ父親の立場にもありますので、両方の「父と子」を重ね合わせ、歴史は繰り返されるのだな、という感慨を持ちます。

一方で、カステルヌオーヴォ=テデスコの「フィガロ」。ロッシーニの『セヴィリャの理髪師』中に出てくる例の「フィガロ、フィガロ、フィガロ」というアリアを、思わず唖然とするテクニックで演奏します。これなんぞ、ツルゲーネフの感傷をぽいっと吹きとばす勢いです。しばし唖然、呆然。なんともすごい演奏です。

全14曲のうち、(7)~(9)までの三曲だけが藤原真理(Vc)、岡本美智子(Pf)による演奏で、あとは全部ヤーノシュ・シュタルケル(Vc)の演奏です。ただし、(1)~(6)は岩崎淑(Pf)、(10)~(14)は練木繁夫(Pf)と記載されています。

■これまで記事にしたチェロ独奏曲やチェロ主体の室内楽作品
(*1): J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」を聴く
(*2): ヨー・ヨー・マ「愛の喜び」を聴く
(*3): シューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」を聴く
(*4): ベートーヴェン「チェロソナタ第3番」を聴く
(*5): フランクのチェロソナタを聞く
(*6): 「風のかたみ~宮澤賢治へのオマージュ」を聞く
(*7): J.S.バッハ/チェロとチェンバロのためのソナタ

ヨー・ヨー・マ、リン・ハレル、ロストロポーヴィチ、フルニエ、藤原真理、シュタルケルと、演奏家も多彩。そういえば、マイスキーのCDは持ってないかもしれない。

写真は、路傍のタンポポの綿毛。クローズアップにすると、風情があります。
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