電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

飯森&山響モーツァルト交響曲全曲演奏定期演奏会・第2回を聴く

2007年10月07日 06時04分13秒 | -オーケストラ
土曜の夜、山形テルサホールで、飯森範親指揮山形交響楽団によるモーツァルト交響曲全曲演奏定期演奏会の第2回目を聴きました。足かけ8年に及ぶと言う長期プロジェクトの初年度、聴衆の入りもほぼ満席です。コンサートマスターは高木和弘さん、そのお隣に犬伏亜里さん、ヴィオラのトップに倉田さんが入っています。女性奏者の方々は、色とりどりのきれいなドレスで、とても華やいだ感じです。

今回のプログラムの最初は、モーツァルト9歳のときの作品である交響曲第4番ニ長調K.19です。楽器編成は、オーボエ2、ホルン2と弦楽5部。旅から旅の生活の中、ロンドンで、大バッハの末子ヨハン・クリスチャン・バッハに会ったらしい。これも、彼の影響を受けた作品だといいます。後年のモーツァルトのシンフォニーとは比べられない、シンプルな音楽ですが、軽やかでエレガントで、楽しみました。

さて、次はニ短調のピアノ協奏曲第20番です。ピアノ独奏は、つい先頃クララ・ハスキル・国際ピアノコンクールに優勝したばかりの河村尚子(ひさこ)さん。笑顔がすてきな、とてもチャーミングなお嬢さんです。
第1楽章の出だしは、やや遅めのテンポで。素晴らしいピアノです。オーケストラの皆さんも、思わず力が入ります。おや?ふと気づいてしまいましたが、山響の弦楽の音の消え方が、違うみたい。ふわっとやわらかで、澄んでいる感じ。第2楽章、優美な調べが一転して、激しいピアノの訴えによりそうように、長いフルートの嘆きの音。再び優美に回帰してしずかに終わると、すぐに第3楽章へ。
第3楽章は速いテンポでたたみかけるように。単に明朗快活な楽章ではありません。河村さん、時にやや前かがみになって演奏します。カデンツァもちょっと違うみたい。ポニーがはねるような、リズムを強調したものでした。

鳴り止まぬ拍手にこたえて、河村さんのピアノのアンコール、1曲目のモーツァルトのソナタ(?)の次、2曲目は何だったのでしょう。曲名がわかりません。でも、本当に素晴らしかった。

休憩の後、交響曲第31番ニ長調K.297「パリ」です。こちらも3楽章だけの曲で、当時のドイツのオーケストラはあまり上手でなかったらしく、また実入りも少なかったので、モーツァルトはしばらく交響曲から離れます。訪れたマンハイムの宮廷楽団の水準が極めて高く、創作意欲がわいていた時期に、母とふたりで訪れたパリでできあがった曲だそうです。フルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペットにクラリネットを加え、クラリネットとファゴットの対話が楽しめる、ニ管編成の本格的な交響曲。私も実際に聴くのは初めてです。
弦楽がピリオド奏法をとり入れただけでなく、ナチュラル・ホルンやバロック・トランペット、バロック・ティンパニを用いた演奏は、楽章間のホルンの管の交換が大変そうです。気合いの入った演奏で、やっぱり弦の音の消え方が澄んでいるように感じます。スタイリッシュな3楽章が終わり、盛大な拍手。

おや?いつもと違い、アンコールがありました。なんと、交響曲第31番の第2楽章、これをオリジナルとは違い、エレガントなパリ版で演奏しました。なんとも一晩で二度美味しいとはこのことでしょう!

終演後のファンの交流会では、河村さんと飯森さんのインタビューが興味深かった。演奏するとき、どんなことに気をつけていますか、という問いに対し、河村さんはドイツの聴衆が白髪の人ばかりになりつつあり、若い聴衆を増やすように心がけている、と答えたのに対し、飯森さんは、いつも自然体なので、心がけていることは特にありません。ただ、聴衆の立場で、どんなふうに聞こえているかを常に考えるようにしています、とのこと。このとき、河村さんは真剣な顔で、「飯森先輩」の言葉を聴いていました。なんでも貪欲に吸収しようとしているのだな、と感じられました。

でも、飯森さんに「これから焼肉を食べに行きましょう」と誘われた河村さん、親指を上げて「やったね!」というポーズで喜びを表していましたので、けっこうおちゃめな女性なのかも。今回も素晴らしい演奏会でした。
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