厳選!ビジネス書 今年の200冊

2008年ブログ開設から、紹介したビジネス書は3,000冊超。
1日2,000PVの仕事力を上げる書評ブログ。

2015年47冊目『時間資本主義の到来』

2015-03-18 14:22:28 | おすすめビジネス書

amazonへのリンクはこちら

評価 (4点/5点満点)

新幹線発車までの待ち時間、ふらっと立ち寄った本屋で偶然良い本を見つけました。

この本は「時間価値」というアングルで、現在生じている企業行動や消費者行動の変化を分析し、私たち人間の未来図を提示していこうという試みで生まれました。「時間価値」を意識して企業や消費者が行動パターンを決定していく「時間資本主義」という新しい時代の到来を解説しています。

携帯情報端末の発達、高齢化、都市化といった複数の要素の掛け算によって、我が国における「時間価値」は幾何級数的に増大しているのです。

・数分あるいは場合によっては数秒でできる生産的な行動が格段に増え、こま切れの時間の価値が格段に上昇した。

・高齢化とは国民全体で平均余命が少なくなることと同値であり、国民全体で見た時間の希少性は否応なく高まっている。

・労働時間は長時間化する。余暇や買い物などプライベートの時間はいきおい少なくなり、どのように業務を効率化するかなど「時間価値」への意識は急速に高まっていく。

さらに、時間価値には「節約時間価値」(その物やサービスを使うことによって時間が短縮でき、有意義な時間が生み出される)と「創造時間価値」(その物やサービスを利用することによって、有意義な時間が生み出される)があり、これはつまり「時間の効率化」と「時間の快適化」という2方向の時間価値があるということです。

そして、未来図(将来像)として、職住近接や東京一極集中が更に進むことを提示します。

本書のタイトルや端書き、目次を眺めると一見、大学の先生が書いたような難しいイメージを持たれるかもしれません。しかし実際は、経営コンサルタントの松岡真宏さんが、企業・消費者行動の実例を用いて、時間価値の捉え方をを分かりやすく説明しています。

【my pick-up】

◎自分の時間のクオリティをより上げるためには

時間資本主義の時代と大上段に構えると、どうしても「時間の効率化」という側面が強調され、「時間の効率化」に沿ったITサービスなどが想起されがちである。確かに、「時間の効率化」では負の時間帯を少なくすることは可能であるが、それはあくまでもマイナス幅が小さくなるだけであり、私たち人間の満足度のプラス幅を大きくする話ではない。

時間資本主義になればなるほど、「時間の効率化」的な話やサービスが中心になるかもしれない。だが、「時間の効率化」だけを進めて、効率化によって生まれる「かたまり」や「すきま」の時間を快適化して、時間に彩りを与えない限り、私たちの人生は豊かなものにはなりえない。「時間の効率化」だけの積み重ねは、無色透明の空虚な時空を作り出すだけの徒労である。

時間資本主義の時代とは、時間が大切になるから、いろいろな負の時間を少なくしようという単純な時代ではない。負の時間を少なくするすべがどんどん供給されればされるほど、それによって生み出される無色透明な時空を、どのように実りある時間に変えるかということが従来以上に問われる時代なのである。こうしたマインドセットの転換こそが、時間資本主義というパラダイム転換において最も求められる覚悟なのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする