日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

クラスの流行語。「粗心大意」の卒業生。

2008-10-01 07:54:13 | 日本語の授業
 今朝も雨です。「台風が秋雨前線を刺激して云々」と、天気予報では説明していました。寒いやら、鬱陶しいやらで、外国人の学生には不評なのですが、古来から日本人は、「秋の長雨」を楽しんできました。秋の長雨はいいものです。暑さで寝苦しかった夏の夜が終わり、過ごしやすい秋の夜が始まります。一人で物思いに耽っていますと、雨音の中から秋の虫が涼やかな声を響かせてくれます。本来ならば、こんなふうに何かに集中できる時間のはずなのですが…。

 もちろん、子供の頃は、だれかが「秋は、物思う頃であり、人恋ゆる頃であり…」と言うと、必ず「豚肥ゆる秋」と、茶々を入れたものでした。本当に子供というのは、わかりきったことを、わかりきった時にするのが、うれしくてたまらないものなのです。

 今、子供に戻って日本語を学んでいる学生達も、同じような反応をします。

 最初の時間に習ったことを、次の時間に言っては、大喜びしているのです。しかも、言う人の声がどんどん拡がっていくのですから、こちらとしても、怒っていいのやら、喜んでいいのやら、解らなくなってしまいます。

 それも、いつも「どうして、急にこんな事を言い出すのか」と、最初は解らないのです。それで、こちらが戸惑うのが、また逆に面白いのでしょうね。大学を出ていたり、三十歳を過ぎたりしていても、学んでいる時は、みんな、同じ。子供と同じようになってしまうようです。表情が無邪気に飛び跳ねている子供のような感じになるのです、みんながみんな。

 先日は「てん、てん、てん」が大流行。一人が繰り返すと、次はまた一人、その次はまた一人と、みんなが次々にまねをしていきます。何か言った後にいつも「てん、てん、てん」をつけるのです。時々「使い方が違うな」と感じることも「なきにしもあらず」なのですが、そこは彼らの興を削いではなりませんから、黙っています。隠れて、お腹で笑っています。結構、我々も楽しんでいるのです

 しかしながら、昨今は忙しくて、しかも、中国からの疲れが続いていて、なかなか一緒に笑うというわけにはいきませんでした。余裕がなかったのです。しかし、この二三日は、その疲れもほどよくとれて、どうにか日常に戻ることができたようです。

 そんな昨日、久しぶりに卒業生からの電話を受けました。

 彼に対しては、この日本語学校にいる時も、卒業してからも、そうだったのですが、顔を見るとすぐに文句を言いたくなってしまうのです。「あれもだめ。これもできていない」と。よく考えてみれば、他の学生に比べて、別に劣っているわけでもないのです。しっかりしていて、生活力もある。男気もある。それなのに、会えば文句ばかり言ってしまう。

 向こうも、言われると、いつも、ズリズリと後ずさりして逃げていくというふうだったのですが、昨日はびっくりしてしまいました。すぐに解るはずの彼の声が、全然解らなかったのです。

 名前を聞いても、「えっ!」。また確かめても「えっ!ほんとに◯◯なの?」といった具合で、それを、五回か六回は繰り返してしまいました。話しているうちに、確かに本人であることは解ったのですが、言葉の調子も、声のトーンもまるで日本人のようで、いつの間にこんなに日本語がうまくなったのだろうと思われるくらいでした。もっとも、話の終わりの頃には、「馬脚を現して」いましたけれど。油断すると、日本語の下手な ◯◯ に戻ってしまうようですね。

 彼から同期の学生達の近況も聞きました。それに、今、授業は週に三日だけであること、授業のある日にはアルバイトをしていないこと、「普通の生活」をしていることなどを聞きました。多分、彼にとっては毎日往復二時間以上かけて、この学校に通っていた頃が一番辛かったのかもしれません。しかも、勉強しないと、いつも「心に鞭打たれていた」んですもの。「勉強しなければならない人間」が、「学校から遠く離れた所に住む」ということは、それだけ大変なことなのです。なんと言っても、朝の、あの、殺人的なラッシュの中を、かいくぐってやってくるのですから。

 彼の場合は在日の親戚も多かったので、どうにか心も病まずに過ごせたのでしょうが、大学に行くことをめざしているならば、日本語学校のそばに住むのが一番いいのです。何かあった時には、だれかがすぐに行けますから。

 しかし、「粗心大意」の彼は、私がブログを書いている時間を間違えていました。「先生、まだ学校?」と、すぐに聞きましたから。最初は「あれ?」と思ったのですが、よく考えてみると、「『朝』の6時半から8時まで、ブログを書いている」と以前書いたのを、「『夕方』の6時半から8時までブログを書いている」と読み間違えていたのですね。「うーん。大丈夫かなあ。これで、来年、四年生になれるのかなあ。再来年、卒業できるのかなあ」です、全く。

 「英語は難しかったけれど、後は大丈夫だった。必要な単位はみんな取っている」と彼は言っていましたけれど、「レポートは、週に一回は出さなければならず、大変だけれども、出している」と、彼は言っていましたけれど、「本当にそうかなあ」と心配になってきます。案外、適当なところがありますからね。できていたつもりだったのに、本当はできていなかったりして…。

 けれど、みんな元気にやっているそうで、安心しました。文句を言われないためにも、単位を落とさないで、ちゃんと卒業して下さい。そして、がんばって就職して下さい。まだまだ「道は半ば」ですぞ。

日々是好日
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 東京は暑いと思っていた…。 | トップ | 「入学式(10月生)」と「... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日本語の授業」カテゴリの最新記事